長年に渡るGEAR対人間の攻防、所謂『聖戦』には力があるのならと、年若の少年までもが戦場へと駆り出されるまで人類は追い詰められていた。 カイも本来ならば親元に保護され、こんな戦場ではなく学校で学び、遊んでいる年頃のはずである。 しかし、彼は自分からこの長きに渡る『聖戦』を少しでも早く終わらせたい、と志願してきたのだ。 こんな幼子までもが戦場へ駆り出される現状に、クリフは嘆きを隠せなかった。 大人に混じって、同じように生活し、心配をかけないためにと、多少辛くとも我慢する。 一度戦場へ出れば大人顔負けの剣技に強力な法力。 たった数年で隊長クラスまで昇りつめた実力の裏には、並々ならぬ努力があった。 年齢から言えば十分子供なのに。 甘えを知らない子供は、人に頼ると言うことも知らなかった。 そんな折り、とある事情から聖騎士団へ半ば無理矢理入団させた男にカイが懐くとは思わなかった。 甘えることを知らないままだった少年は、甘えることと頼ることの2つをその男に教えてもらった様なものだ。 初対面時のその男の態度は、どんなに温厚な者でもカチンとくるくらいに悪かった。 生真面目で礼儀正しいカイにとっては目に余るものだったのだろう。 案の定、二人は激突したのだ。といっても、カイが男に突っ掛かり、軽くあしらわれるだけだったが。 クリフが宥めてもそれは変わらなかった。 しかしそれもGEAR討伐の遠征に出てから変わったのだ。 メガデス級のGEARに劣勢を強いられたその戦闘は、如何に天才剣士だの人類の希望だの言われていたカイであっても、被害を抑えることは難しかった。 GEARの鋭い爪が頭の上に振りかざされ、ここまでかと思われた次の瞬間、真横からの熱風と轟炎と共に目の前のGEARは一瞬にして灰と化した。 その法力の発生元には、鉈のような剣を振りかざした男の姿があった。 男はそのまま背後に迫っていた別のGEARを振り向き様に切りつけ、足で蹴り飛ばす。 その姿に、カイは思わず見惚れてしまっていた。 それからと言うもの、男の姿を見つけると、後を追いかけ回すようになる。 その姿はまるで雛鳥が親鳥について回るようだった。 → |