雨の白玉(短編小説置き場)
□天使と悪魔のはかりごと
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「つ……疲れた。てか、なんで風呂に入ってこんなに疲れなきゃなんねーんだ?」
客間に敷かれた布団の上へ倒れ込む。
「……きゃ!?」
「………………」
布団の中から小さく聞こえた叫び声に、無言で布団を捲った。
「双葉!三月!四季!何してんだ…お前ら」
「あ〜あ…三月が声出すから見つかっちまった」
「阿呆か!嫌でも気づくわっ!!」
「んじゃ、壮一郎の右側ゲ〜〜ット!!」
「じゃあ三月は壮ちゃんの左側☆」
「おい!なんでナチュラルに一緒に寝ることになってんだ!?」
「いーじゃん。兄妹なんだし」
「兄妹だからよくねーんだよっ!」
「じゃあ壮ちゃん以外の男の人とならこうやって一緒に寝てもいいの?」
「それは………………ダメだ!」
「じゃあ壮ちゃんと寝るっ☆」
「………はぁ。でもそれだと四季が仲間はずれになるだろ?だから…」
いつの間にか背後に立っていた四季が俺を布団へとぐいぐい追いやる。
「四季は……壮くんの、上」
ぽすっと小さな身体が寝転んだ俺の上に寝そべる。
「壮くんの身体………あったかいね」
「お……おい、四季?くすぐったいって!」
「ほんとだーっ!壮ちゃんの身体あったかい☆」
「三月…、ちょっと…!」
「なんだよ壮一郎…さっきの風呂のこと思い出して興奮してんのか?やーらしー…」
「するかっ…!!だから…!」
振り払おうともがいていると、聞こえるのは3つの寝息。
そっと抜け出そうとしても、左右と上からがっちり押さえ込まれて身動きが取れない。
「………ふぅ。まったく……」
どんどん可愛く、我儘になっていく妹たちに俺は……いつまで翻弄されるんだろう。
そのうちこいつらにも彼氏ができたりするのかと思うと胸のうちがチクチクと苛立つ。
どうせしばらくすれば向こうから、ウザいとか何とか言って離れていくんだろう。
ならば、それまでのあと少しの間だけこうして過ごすのも悪くないかもしれない。
そんなことを思いながら……眠りに……つこうと……した。
「むにゃ………壮ちゃ〜〜ん☆」
「おい三月………いたいいたいいたい…首、しまってる!」
「むふふふふ…壮一郎………えっち………」
「双葉!?お前何の夢見て…何だ!その手つきは!?」
「壮くん……………スキ」
「四季……お前だけだ。その天使のような寝顔……って、四季!そんなとこ握っちゃだめだ!」
「やっぱりいやだあああああっ!!」
「あなた……壮ちゃんも久しぶりにあの子達に会えて嬉しそうですわね」
「そうだな……ともえ。あんなにはしゃいで……」
夫婦の寝室にも、壮一郎の叫びが木霊した。