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□The forbidden ground
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The forbidden ground






暖炉の火がパチパチと燃えている。




僕は通された部屋で毛布にくるまって安楽椅子に腰掛けている。


ゆらゆらと揺れる椅子は何だか楽しい。







「寒かったでしょう?
よければこちらをどうぞ…」





声が掛かって振り向くとグラスに深紅の飲み物を入れて男が立っていた。

当たり前だがコートは脱いでいて…

いかにも貴族らしいリボンのついた白い光沢のあるシャツと黒いベスト…



下ろしていた髪は今は後ろに一つにまとめられている。







立ち居振る舞いからしてそうだった。
ラフな服装でも品がある。
やはり高貴な身分であることを言わずもがな照明していた。




「どうぞ?」





一向に動かない僕に男が再度声を掛ける。




それで我に返ってグラスを受け取ると手がジンジンする気がした。




「ホットワインです」


「ホットワイン?」


「ええ、ワインです。
召し上がれるお年でしょう?和さんは…」


「匂いからするとアルコールですよね?
飲んだことがないので分からないですけど、きっと飲めます…」




そのグラスを両手で持つ。






「いただきます」








初めて口にするその飲み物は渋いような甘いような、よく分からない味だった。

液体が通った場所がやっぱりジンジンする気がした。





「一気に飲むとすぐに酔いますよ?」


「酔う?」


「…お酒に酔う、って言うでしょ?」


「……。」


「ご存じない?」


「すみません。僕はその…」


「謝る必要はありませんよ。
知ろうとしないことは罪であっても、無知なことは罪ではありません。
だから、ね。

和さん、貴方は悪くないんですよ?」






男の手が頬に触れる。
自然と男の顔に目が行く。



視線が絡む。



何でだろう?
目をそらせないし、動けない…




持っていたグラスを男が取り上げる。
飲みかけのホットワインを男が一気に口に流し込む。


僕のワイン…


クイッと男が顎を上げさせる。
必然的に上を向く僕の顔に男の顔が近付く。





「…っ…!」


重なった唇からワインが注ぎ込まれる。
喉を鳴らして飲み干していくけど、口に入りきらない液体が溢れて喉元に流れていく。



数回、喉がなって唇が離れる。
男が名残惜しむかのように、ペロリと唇を舐める。




「ごほっ…んっ…げほげほっ…」



盛大に咽せて激しく咳き込む。
ちょっと涙目になった。




息がちゃんと出来なかったせいだろうか?
少し目が回る…





「それが酔うって事ですよ?」


「酔う?」


「そうです、酔うです…
もっと酔ってみますか?」


「……。」





視界もぼやけてくる。
でも、クラクラがふわふわに変わって、それが心地よくて僕は素直に頷いた。

クスリと男が笑った気がする。






「和さんは素直ですね」


「?」



言われている意味が分からない。
何の会話もしてないのに素直だと言われても…
単純だとからかわれているんだろうか?



「あ、あの…」


「シーッ。黙って…」



有無を言わせない雰囲気。
僕は言われた通りに黙る。

また男の手が頬に添えられる。




「ん…っ……ぁ……」



注ぎ込まれる液体を今度はゆっくりと飲み干していく。

全部飲み干したと思ったら、今度は何か塊が口の中に押し入ってきた。




「なっ…んぁ……はぁ…んっ…」



それが男の舌だと分かったときには歯列をなぞられ、舌を絡めとられ、咥内を縦横無尽に蹂躙されていた。






音を立てて唇が離れる。




「や、…な、何…今の……」


「これもご存じない?」





コクリと頷く。





「これはキスですよ。
また一つ学習しましたね…
和さんはお勉強、好きそうですね?

もっとしますか?





お勉強…」





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