キリリクss
□純情エロチシズム
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あの、陣野警部が今…俺の前に居る。
ガキの頃から繰り返し見てきた北速水シリーズのビデオ。
その中でも一番好きだったのが陣野警部だった。
まさか、一緒に仕事が出来る日が来るなんて。
……本当に、芸能界に入ってよかった。
台本の読み合わせでも、いつも以上にあがって…。
やたらとボロが出ちまうのは…決してこの慣れない執事服の所為だけではないかもしれない。
磯前忠彦には、見る者を惹きつける力がある。
いつも斬られ役や脇役ばかりだが、画面に出た途端全てに迫力が出て締まって見える。
役者を目指してて、磯前忠彦に憧れない奴はいねーだろ!
…と、俺は思う。
TVの中と同じ仕草で煙草に火を点ける姿を見る度に、目が釘付けになる。
それでも、ミーハーな奴と思われたくなくて。
平静を装い、「オッサン」と軽口を叩く。
話してみると…取っつきやすいし面倒見もいい。
役者として。
1人の男として。
様々な顔を見せる磯前忠彦に、俺はどんどん惹き込まれていった。