web拍手お礼ss置き場

□雨格子拍手ss(薬局バイト編)
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「ありがとうございました〜
 またどうぞ〜」



レジを済ませて帰路に着くお客様をお見送りする。






ここはとある薬局。

和がここでアルバイトを始めて1ヶ月が過ぎていた。


時給850円以上で大学終了後の夕方以降のアルバイトを探し、見事受かったのだった。




「一柳君」

「はい、店長」

「今日、新商品の入荷があってさ、悪いんだけどレジが空いたら品出し手伝ってくれる?」

「わかりました。今、丁度空いてるんで手伝いますね」

「悪いね、助かるよ。商品はバックヤードにあるから、宜しく頼むね」

「分かりました〜」










バックヤードの灯りを付けて段ボールを手に取る。

中身を確かめると…





「これか…」





あの悪夢の館から生還して、一心地着いた和の最近の悩みは、コレだった。




最近の薬局では食事、薬、日用品、色々と揃う。

その日用品の一つにあるアイテムが「大人のナイトグッズ」なのである。


独特の色合いとパッケージで段ボールいっぱいに敷き詰められる商品たち。

〜爽快感たっぷり、苦みのないクールミント味ジェル〜

〜甘い夜のお供にストリベリー味ジェル〜




「……。
やだな、これ並べるの…」




潤滑油やお口専用ジェルなど、使い道が「大人」な商品、もう成人だからと言っても、なかなか正視できない。


〜HOTに感じる薄型タイプ〜

〜一体感を重視した最新技術、愛し合う二人の体温を直接感じて下さい〜

〜ジェル内蔵、男性もスムーズに装着可能〜



避妊グッズも豊富にあるようだ…






「これは入浴剤、これは入浴剤…」


ひたすら自己暗示を掛けて商品を陳列する。


ふと時計を見ると夜7時になるところ。


「やばい…例のお客さんが来る!!」


和はその場を離れようとするが、後ろから

「あの〜」

と、声を掛けられ固まる。


(来た…)






現在、ブラックリストNO.1のお客様のご登場。

一見して、普通のサラリーマン。

若干、脂ぎった感はあるが、基本的に普通のどこにでも居そうなオジサンだ。

けれど、一つ違うのは…













「すみません、商品について聞きたいんですが…」


「はい、何でしょう?」


「実はね、ここだけの話なんだが…」


「はぁ…」


「僕のサイズはちょっと他のより大きくてね」


「え?」


「だから、アレのサイズだよ」


そう言って和の前を軽くなで上げた。


「ひっ!!」


「分かった?ここのサイズだよ」


「……。」

恥辱で和に生理的な涙が浮かぶ。

「でね、普通のだと入らないんだよ。君のオススメはどれかあるかい?僕のでも入りそうなの。教えてよ」






こんなやりとりを初対面で交わし、硬直し、慌てふためく和の様子が気に入ったらしく、いつも和がバイトに入る時間を狙って来店してくる。


そして知っているはずの道具の使い方や、商品詳細を聞いてくるのだ。



そして、今日も例のごとく…


「この間の使ってみたけどダメだったよ。他にオススメはないのかい?」


「えっと…」


「君が使ったことあるのはどれかな?」


「その…」


「ちなみに、僕のは大きいからさぁ〜」


「……」




(もうヤダ…
誰か助けて…)






「ほう、そんなに自慢できるほど大きいんですかぃ?」

「えっ」
「えっ」

「どれ程ですか?お計りしますよ〜」

そうにっっこり笑って言うと、白衣のポケットからメジャー取り出す。

メジャーを引き出してはシャァーと音を立ててしまう。


笑顔が恐い…


「ひ、日織…何でこんな所に??」


「ああ、そりゃ和さんが最近困ってる事があるって言ってたから、ちょっと様子を見に…ね」

「でも、何で白衣?」

「いや、今日一日撮影でね。現場近かったから、そのまま来たんですよ」

「そうなんだ」


お客の存在を思い切りムシして会話を進める二人。

それを良いことに、そのセクハラ客がその場を離れようとすると…


「あ、これこれ。最近、使ったのってコレだよな、和」

「へっ?」

突然、名前を呼ばれて振り向と、明らかに不良スタイルの少年が立っていた。


「な、なんで…」

「おや、椿さんも護衛ですか」

「まぁね。って、おっさん。これだから。最近、俺と和が使ったの。結構、良かったからオススメだぜ」

不敵な笑顔を浮かべて、セクハラ客に商品を持たせる。

「あんた、下手そうだから色々、相手も大変だろ。これもプラスしておけば?」

そう言って渡したのは精力剤とどこでも使用OKと書かれた潤滑油。

「ああ、椿さん。それだったらこれも良いんじゃないですか?」

そう言って追加したのはイボイボが付いたコンドーさんと、お口用のジェル。

「この人、攻めのテクニックも単調そうだし、味もひどそうだから、お相手の事を考えるとコレくらいの装備も必要でしょう」


「……。」













「あ、ありがとうございました…」


結局、日織と椿が押しつけた商品を全て購入して、そのお客は帰っていった。

おそらく、二度と来店することはあるまい…






〜バイト終了後〜


「二人とも、ありがとう」


あの変態客につけ狙われて以来、辟易としていた和にようやく笑顔が戻り、撃退してくれた二人に感謝を伝える。


「いえいえ、和さんのためですから」


日織は撮影が終了したらしく、いつもの着流しに戻っている。

「気にするな、大した相手でもなかったし」

椿も学らん姿から普段着のラフな服装に着替えている。


でも、二人とも本当にいいタイミングで来てくれるから、驚いたよ。

「ああ、それはちょっとね」
「な、日織」

「??」


「そうそう、せっかくだと思って和のお店の売り上げUPに協力しておいたぜ」

「あ、ありがとう!で、何買ったの?」

「ん?これ」

茶色い紙袋に包まれたそれは


〜夜でも光る!蛍光塗料付き(人体無害)!!超薄型タイプ〜


「な、な…!!」


「俺はコレです」


〜舐めても大丈夫。チョコレート味のボディローション〜


「ひ、日織まで…」


「どうせなら、楽しまないとね。
それにしても、最近の薬局は充実してるんですねぇ」

「そうだな。ここの店、俺が知ってるところより品数多かったぜ」


「あ、あの〜」


「で、せっかくだし、今日は久し振りに和と楽しもうかな〜って」


「……
それじゃ、さようなら!」


くるりと二人に背を向けてダッシュしようとしたところを、二人の手が同時に和むの肩を掴む。


「逃がしませんよ」
「逃がさねぇよ」





「やだぁぁぁ〜〜」





和の叫び声が、薬局前に響く…








★あとがき★
これは実話ネタをもとにしたフィクションです。
居るんですよね…
薬局でバイトしてると、近寄ってくる不埒な輩が。
でも、せっかくなのでネタに起用してみましたVv



 

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