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□Werewolf〜Vol.2〜
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Werewolf〜Vol.2〜
(那須×椿)






那須に対して初めて告げた自分の言葉





『本当の初めては正気のお前がいい…』






でも、それはまだ実現してなくて…



結局、人狼と変化した那須と最後まではしてないけれど


お互いに気持ちイイ事はした…




そんな俺のことも那須はちゃんと受け入れてくれてて






『今度は今の僕と気持ちいいこと…しようね?』








そんな事を言い出すから…

俺の繊細な心臓はそれ以来、時限爆弾を抱えてるかのようで、

緊張と葛藤と羞恥と…とにかく色んな気持ちがごちゃ混ぜになって、那須とまともに話せなくなっていた








研究室




「ね、椿くん。
今日の事なんだけど…」





ガシャンッ!


バサバサ…


ガタッ…








机の上にあった飲みかけのコーヒーが入ったマグカップを倒して、慌てて拭こうとして、書類の山を机の上から落として、それを集めようとしたら、座ってた椅子に躓いて転んだ




もう、俺…最高に格好悪いな




分かってる
こんなんじゃ那須の役に立てないって…


でも、

やっぱりまともに顔が見れなくて…




っていうか、あれ以来、あいつだって何も変わらないし…

結局、その場の勢いの会話として流されたんだろうか…






「珍しいね。椿くんがこんなにいっぱいドジするなんて」



親が子供を見守る様な温かい目で見られて、余計に肩身を狭くする





那須が俺を見る目は

やっぱり子供を見る目で…






俺を"そういう対象"としては見てないって事…なんだろうか

だとしたら、自分は何て空回って恥ずかしい事を口にしてしまったんだろう






無かったことにして振る舞えれば、また元の関係に戻れるんだろうか?



でも、自分はもう知ってしまっている


正気の那須ではなかったはいえ、

あの手の温もりと激しさ

熱い鼓動…




みんな覚えている






那須の手が肩に触れる


「資料は無事だったから、気にすること無いよ?」



俺が固まっているのを、失敗続きなのを落ち込んでるんだと思って那須が話しかけてくる




「……。
悪いな。気を付ける…」




口から出てくるのは素直でない、どこか他人行儀な言葉だけ







那須が何か言いたそうにこっちを見てるけど、俺は敢えて視線を外して「お腹空いたから買い出しに行って来る」と、ドアに近づいた






ドアノブに手を掛けて、引き開こうとした所で、那須の大きな手がドアを押し戻す





「ねぇ、椿くん?」




真後ろで放たれる那須の声とその息遣いが、耳と心を刺激する



蛇に睨まれたカエルみたいに動けない


怖くて後ろを振り向けない






「な、なんだよ。筋肉。
お前も何か買ってきて欲しいものでもあんのか?」




苦し紛れに言葉を返す




「僕のこと避けてるよね?
ここの所、ずっと…」



「そうか?そんな事はないと思うぞ。
俺はいつだって同じだ」



「じゃぁ、なんで僕と目を合わせてくれないのかな?」



「気のせいだろ?」



「そう?
じゃ、どうして今、僕の方を見てくれないのかな?」



「それは、俺が今出ていこうとしてたから…」



「じゃぁ、どうしてそんなに僕のこと…意識してるの?」




「なっ!!」







ドアを抑える手とは反対の手が胸に回る


心臓の上でピタリと止まって、その鼓動を確かめるかのように這わせる





「や、めっ…ん…」



思わず漏れ出た声に、自分でもビックリして、口を塞ぐ






「椿くん…」


「な、那須…ん、ダメだ…ぁ…」






耳をくすぐる那須の声に簡単に色の混ざった声がこぼれていく



ドアを抑えていた手が腰に回って、後ろから抱き締められる形になる







「前回の満月の夜…
僕が言ったこと、覚えてる?」



「…っ!」








そんな事、今更聞かれなくたって…

もう何度、思い出して身体を熱くしたか分からない




それ程に俺の中に刻み込まれてる…







「もうすぐ次の満月が来るんだ…
そしたら、僕はまた…」





那須の言葉に初めて不安の色が見えた気がした







俺は本当に馬鹿だ

本当に恐れているのは俺じゃなくてコイツの方なのに…




自分の身体なのに、自分の意志ではない凶暴な『何か』に支配される恐怖…

それから解放される為に、日夜研究を続けていたというのに…





この数日、俺はまったく役に立てていない






『お前のことは俺が守る』





そんな大口叩いておきながら…
救いようのない馬鹿だな、俺は…








「那須!」



身体を捻って、久し振りに那須と正面から向き合う







「俺、絶対にお前を治す方法見つけるからな!」





「…椿くん」





突然の宣言に驚いた顔をしていた那須が、朗らかに笑う。





「うん。頼りにしてるから…」





そう目を細めて笑う





那須の手が頬に触れる

さっきまでの緊張が嘘みたいに消えていた






いつの間にか那須から微笑みが消えていて、真剣な男の顔をしている



後わずか…

どちらかが少しでも動けばお互いの唇が触れる







そんな時







ガチャリ





突然、ドアが開いた





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