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□Promised Day
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Promised Day



「うわっ…すげぇ!」



列車に揺られ、長いトンネルを越えた先に広がる世界は一面が白銀の世界だった










俺は那須と暗石のおっさんと一緒に現世に生き残るヴァンパイアの元へと向かうために旅立った

すべては那須の身体を元に戻すため…





「見かけ通りガキだな。
雪一つでそんなに喜べるのが羨ましい限りだ。
俺としては寒々しくて堪らん…」

「おっさんっていうかジジィだな、もはや」

「何っ!?」

「まぁまぁ。寒かったら身体を動かすと良いよ、暗石さんは。
椿くんは寒かったら僕が温めてあげるから大丈夫だからね」

「何をどさくさに紛れて言ってやがるっ!」

「助手と俺とじゃエライ差だな、オイ…」

「あれ?どさくさじゃなくて明言したつもりだったんだけど…
それと暗石さん、僕に暖めて貰いたい?」

「冗談じゃねぇ!」

「ふざけんな、筋肉!
テメェは俺だけ暖めてれば良いんだよ!
って、何言わせんだ!このバ、ふぐっ…」



全部を言いきる前に那須に思い切り抱き締められて、鯖折りみたいになって、言葉が掻き消される
ついでに意識も飛びそうだった…



「チッ…付き合ってられるか。
俺は煙草吸ってくる…」


そう言って暗石は席を立って車両の個室から出て行った



「っんもう、馬鹿筋肉!
いい加減に離せよ。苦しいだろ?」


溜息混じりにそう言うと、少し力が抜かれて息が楽になった
でも那須の腕は未だに腰と背中に回されたまま


「離せって…」

「う〜ん、いやかな?」

「笑顔で拒否るなよ!」

「え〜、だってイヤなんだもん」

「だもんって、お前33歳のおっさんが使う台詞かよ!」

「ダメ?」

「そんな捨てられた子犬みたいな目で俺を見るな…」

「じゃあ目を閉じてるからこうしてて良い?」

「そういう問題じゃ…」

「じゃあ、どうしたら椿くんに触れてても良いの?」

「そんなの…」

「今までも我慢してたのに、これ以上我慢なんて出来ないよ、僕。
本当はもっと触れたい…
直接、この肌に触れたい…」


那須の手が頬に触れる
背中に回っていた手がコートの裾から内側に入り込んで、更に服の中に入れられる

直に触れられたとこが熱を持ったみたいにジンジンして熱くなる

恥ずかしくなって顔を背けようとするのに、那須の手がそれを許さない



「キスしても良いかな?」



そ、そんな事聞くなよ!
この馬鹿筋肉!!



「ダメ?」


だから…
別にそんな事をいちいち…


「椿くんが良いって言ってくれなきゃ出来ない」


……。
俺に何を言わせる気だ!


「ね、良い?」


だから良いって…言えるか〜!!
こいつ、絶対に分かってやってるだろ?


顔に血と体温が集まってる気がした
俺に出来るのは精々首を縦に振ることぐらいだ



「ありがと。
じゃ、こっち見て?」


お前の顔見ろって、どうやってだよ!
もう、俺はここに立ってられるのが精一杯なのに…

そんな時に限って列車が大きく揺れてよろめき、那須の胸に倒れ込んだ

厚くて固い胸に鼻を強かに打ち付けて、ちょっと涙目になる




「大丈夫だった?」

「ん、何とかな」

「へへっ」

「何、嬉しそうな顔してんだよ?」

「だって、嬉しいんだもん」

「だから何がだよ!」

「椿くんがやっと僕と目を合わせてくれたこと」

「なっ!?」

「恥ずかしがってるのは何となく分かるんだけど、僕はもっと椿くんの顔が見たいし、見つめ合いたいし、声が聞きたいし、触れ合いたい」

「……。」




そんな恥ずかしい台詞、どうやったら思いつくんだ?
っていうか、何の臆面もなく言葉に出来るんだよ!



「椿くん…」


そんな熱っぽい声で呼ぶなよ…





覚悟を決めて那須の首に腕を回す
那須が触れやすいように顔を上に向けて目を閉じる



思っていた触れあいは軽くさりげないものだった

背に回された手でぐっと抱き寄せられると、本当に合わせるだけの口付け

それでも確かに触れたのが分かる





これだけ…か?




思わずもっと欲しいと思って、那須の顔を自分で引き寄せる



「もっとしていいの?」



答えるのが煩わしくて、自分から那須の唇を覆う



那須が笑った気配がしたけど、自分の行動が如何に恥ずかしいかは十分に自覚してるから、あえて無視する

角度を変えて何度も唇を合わせる
那須の舌がぺろりと唇を舐め上げる
僅かに隙間を作ると、遠慮なく舌が侵入してくる
柔らかくて温かな舌が俺のに絡みついてくる
息する間もないのに、舌の自由まで奪われて、頭がぼうっとしてくる


「…んっ…はぁ…ぁ…」


漏れる吐息が自分のものとは思えなくらい艶めかしくて、羞恥が増す

けど、那須から離れられなくて更に深い口付けを交わしていく




「ぁ…ふぁ…な、那須…んっ…」




最後に軽く音を立てて那須の唇が離れる

息が上がってて話せない




「椿くん…」




馬鹿、呼ぶな…
今、どんな顔して、どんな声でお前と話して良いか分からないんだから…



「欲しくなるね…」



本当に素直な奴
でも、ここで頷けるか!



「もう少し我慢しろよ…」



我慢…
それは那須に言ったものか
それとも自分に言い聞かせたものか



多分、両方だ
もう少し…

俺がお前のものになるまで、そう長く時間はかからないだろうから…



いつかした約束…




那須が正気を失ってしまう前に…






初めては二人で…





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