web拍手お礼ss置き場

□Tell me your …
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Tell me your …



眩しい日差しが目を刺激して、意識が浮上する




「んっ、眩しい…」


瞼をごしごしと擦りながら目を開ける






「おはよう、椿くん」


にこやかな何時もの那須の顔が正面にある


「うん…はよぅ…」


欠伸にかき消されながら挨拶をする




変わらない日常の朝…


那須は「体が動かせないとウズウズするな」なんてぼやきながら、腕を動かし肩回りのストレッチをし始めた

暗石のおっさんはまだコートに身を包んで、目を閉じている



……。
何か大事な事を忘れてるような…




「痛っ…」



那須が少し顔をしかめる


「どうした、那須」


立ち上がって那須に近付く




「何か肩のところがピリッと痛んだんだけど、大した事ないから平気だよ」


「ダメだ、ちゃんと見せろ!
お前、痛みに強いからって普段から怪我とか放置し過ぎなんだよ!
この前だって…」



ん?

何だよ、その満面の笑みは…

俺は今、怒ってんだぞ?




「…何をニヤついてんだよ?」



「嬉しくって」


「あん?何がだよ??」


「椿くんが僕の事心配してくれてるのが、だよ」


さらりとそんな事を言われると、心臓が跳ねる様に動き出して、どうしいいか分からなくなる



「ば、馬鹿な事言ってねぇで痛いところ見せろよ」


照れ隠しもあって、わざと乱暴に那須の服の襟元を広げて肩を出させる



「大した事ないと思うんだけどね」


苦笑混じりの那須が大人しくされるがままになる





露わになった肌に赤黒い点線の輪の様な傷…

一目見て、記憶がよみがえる










『ずっと我慢してただろ、お前も俺も…
我慢したならご褒美がないとな…』




『何だか甘く感じるな…』




『声が出そうになったら俺の肩、噛んでろ』










瞬時に顔が赤くなる

体温が上がって脈拍も上昇





(お、俺…人狼の那須とまた…)


(で、でも一応、あいつも『那須』な訳だから浮気じゃないよな…)


(って、そもそも浮気って何だよ!
俺達そんなんじゃ…)


(いや、でも…『する』って約束したし…それにキスだって、それ以上の事だって…)


(あれ?
でも……






俺、那須から実際には何も言われてない…?)







今まで何度か触れ合ってきたけど、その…
気分が盛り上がってる時は「好き」とか「愛してる」とか言ってくれた気もするけど…



それって有効なのか?





その場の勢い以外での告白…

してもらってない気がする







「…く…?……つ、き…ん?」






言葉がすべてって訳じゃないけど…


でも、不安になる…




「ねぇ、椿くん!」




「うわっ!」






那須の声で思考が中断される




「急に大声出すなよ、驚くじゃねーか!」



「ごめんね。
ずっと呼んでたんだけど返事してくれないし、椿くん一人で急に赤くなったり青くなったりしてるから…」



「うっ…」



「で、僕の肩どうかしてた?」



「あ、それは…」







「単なる打撲だ。
大方、寝てる時にどっかにぶつけたんだろ?」


「お、おっさん!」




いつの間にか起きた暗石が欠伸しながら適当な事を言う


「おはよう、暗石さん。
僕、あんまり寝相は悪くないほうなんだけどな。
ま、たまにはそういう事もあるかもしれないね」


「とりあえず、これでも塗っておけ」





そう言って暗石が軟膏を投げるのを受け止める



「責任もっててめぇが塗ってやれ」




おっさんは昨日の夜寝てて、あの事は知らないはずなのに…




「いくら筋肉馬鹿でも風邪引くぞ?」



「あ、ああ。悪い…
塗るからしみるかもしれないけど我慢しろよ?」



薬を指に出して那須の肩に塗ろうとする




「打撲以外に傷もあるの?」


「え?」




思いがけない問いに指が止まる




「だって、打撲だけだとしみないでしょ?」



「そ、それは…」



「……。
ぶつけて少し擦り剥いてんだろ?
そこに軟膏ぬりゃちょっとはしみるだろうさ」



「そっか〜」



……。

いたたまれない気持ちになって無言で薬を塗る






「ありがと、ございました…」



おっさんに軟膏を返して



「俺、食堂車の様子見てくるから」



と、そそくさと部屋を出た











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