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□Tree of wisdom
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Tree of wisdom

<那須×椿ver>


「那須さん…?
何やってんですかい、あんた…」


「あ、日織くん?
外に行ったら丁度良いモミの木があったから折って来たんだ」


「お、折って?」


「うん!」




館の主に断りもなく、那須は良い笑顔でまだ泥のついた大木をずるずると引っ張ってエントランスから大広間に移動して行く



「……。
人狼の呪いなんてあの人には全く関係ないんでしょうねぇ」


何とリアクションして良いのか分からず、日織は首の裏に手を当てて息を吐いて笑う








あの人狼の呪いを解いて欲しいとここに来た那須という民族学者とその助手…
彼らがここに来てから、随分と色々な事が変わったように思う

まずは騒がしさ

あの強靱な肉体の持ち主の那須は見かけ通りに作業もダイナミックに思うがままに物事を進めていく

それを叱りつつもサポートしていく助手とのやりとりは、端から見ていてもとても賑やかで楽しそうで…




ああ、彼らは「生きている」んだ…と思い知らされる







「日織?」


「和さん…」





ドタン、バタンと誤魔化しようのない物音に和さんが寝室から、眠そうに眼を擦りながら出てきた



「おはようございます、和さん」


「ん、おはよ…
何かすごい音してるけど…」

「ええ、例の学者先生がちょっと、ね」

「…?」

「それよりそんな薄着じゃ身体壊しますよ?」





彼の背後に回り込み、そっと羽織を肩に着せる


「ありがと…」


肩に乗せた手に和さんの手が重なる












「こらぁ!那須!!
てめぇ、何勝手に人ん家の家具破壊してやがる!!」



「あ、椿くん!おはよう。
今日も吹雪いてるけど散歩すると身体が暖まっていいよ!」


「おはようじゃね!
ってか吹雪の中で散歩すんな!お前がそんな中、外に出たら帰って来れなくなる」


「大丈夫だよ、今の僕は狼の力も宿ってるから方向感覚は…」


「うっさい!!
俺が心配するからやめろって言ってんだよ」


「え?何??」


「何でもねぇよ」


ふいっと顔を逸らした途端、那須に抱きすくめられる


「な、那須…」


「心配してくれたんだ、ごめんね。ありがと…」


「…聞こえてんじゃねーか」


「耳もいいみたいで…」


「……。」


「そんな真っ赤に照れた顔見たら…キスしたくなるな」


「バ、バカ!」




慌てて那須の腕を振りほどく




「で、一体、これはなんの真似だ?」


折れた幹がささくれ立って凶器に近い状態で、枝に積もっていた雪が温かな室内で溶けて辺りは水浸しで…

最大限に悲惨な状態だった




「今日、クリスマスだからみんなでお祝いしたくて!」


「え、クリスマス?」


「そうだよ、今日はクリスマスなんだよ!
クリスマスといえばツリーだと思って、丁度良い木があったから折って来たんだ」


「折って?」


「うん!今、立てるからそしたらみんなで飾り付けしようね」


「わぁぁ!待て待て!!
そのままじゃ立てないし、ってコラ!!
力に物言わせて床に直接埋め込もうとすんな!馬鹿筋肉!」



モミの木を振り下ろそうとする那須の腕を掴んで必死に止める


「危ないよ、椿くん」

「危ないのはお前の思考回路だ!
だから、やめろって!!」

「えぇ〜、じゃぁどうしたら良いかな?」

「ちっ、仕方ねぇな…
お前はとりあえずモミの木を下ろせ。で、動くな。何もするな、しようとするな!
俺の事が好きなら絶対に動くなよ!
分かったか?良いな、そのままだぞ!」

「分かったよ」


ちょっと不服そうな顔をしたものの那須は大人しくモミの木を下ろした



「よし、じゃあそのままで待ってろよ」










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