雨の白玉(短編小説置き場)
□揺れる想い
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「…?日織、今、何か音がしなかった?」
この嵐の様な闇の中から、確かにそれは聞こえた。
「ええ、何かこう…でけぇ水音みたいのがしましたね」
「…やっぱり?」
「……和さん。
気になるんでしょう?」
「やだ!何かあったらどうするんだよ〜!」
「でも、このまま怖えままってのも嫌でしょ」
「うっ…で、でも!じっちゃんの遺言だから…
『君子、危うきに近寄るべからず』
って!!」
「はいはい。俺がついてますから」
苦笑いの日織に引きづられる様にして、僕は井戸に出た。