雨の白玉(短編小説置き場)

□成瀬壮一郎、運命の出逢い
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俺は、首元を締め付けているタイを緩めると、首をほぐしながら溜息を吐いた。



執事という役柄上、ずっとこの窮屈を着て、目が悪くもないのに眼鏡をかけている。




…何事も形から入る方だが、流石に一日中この格好では肩が凝った。





今日は、色んな事が起こった。


叔父の公康が所有するこの館を撮影用に何とか借りて、今日は1人早く着いて準備をしていた。

しかし、帽子屋不在のまま集まった役者達だけで本読みを始めていたら、いつまでも来ない南雲役の代わりに妙なガキ、…和が迷い込んで来た。


…変な奴だが、決して悪い奴ではない。

でも、和は明らかに帽子屋じゃないし、俳優には…とてもじゃないが見えない。





どうなってんのかよく分からないうちに、温室ではさらによく分からないモノが置いてあった。



極めつけは車のパンク。




ここまでくると、妙に話ができすぎている気もするが…生憎この雨だし、電波も入らないこの館ではどうしようもない。





なんだか、ザワザワと胸の中が落ち着かない。







ちきしょう。こんな日はすぐに寝ちまうに限る。

…その前に、トイレでも寄っとくか。




そう思って2階の廊下を歩いていると、薄暗い廊下の先で白い人影がゆらり、と宙を舞っていた。




 
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