雨の白玉(短編小説置き場)

□猫の悪戯
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お腹、空いた…。

あー、喉も渇いたな。






昨日も日織とご飯食べて、それから何故かお持ち帰りされて…




『やめ、…っ!…んぁぁ!』


何度も内を突かれて、出したくもない嬌声で喉が枯れ、涙がこぼれるまで散々に抱かれた。


記憶が途切れる前の外はぼんやりと白くなり始めていた気がする。


あれからどれ程の時間が流れたのか…





日織の腕を抜け出してもぞもぞと起き上がる。




ん?







何だろう…

この何度も感じた事のある違和感…








恐る恐る自分の手を見る。






やっぱり!!







思わず頭を垂れる。






また猫になってやがる…
柔らかな布団を前足の肉球で踏み踏みする。





最初の頃はよくパニックにもなったが、今じゃもう慣れた。

いや、慣れたくて慣れた訳じゃねぇ!





ブンブンと頭を振って思考回路を切り替える。






とりあえず腹が減って喉が渇いた、それを何とかしよう…うん。





ちらりと隣を見ると、日織はまだ夢の中…





昨日はよくも!






『もっと、その可愛い声…聞かせて下せぇ』



『くっ、こんなに締め付けて…

気持ち良いですか、俺のがそんなに…』






言葉と体、両方で煽られ弄られた記憶がよみがえる。







俺だって男なんだぞ!

可愛いなんて言われて喜べるかよ…

それに…





いつも俺ばっかり攻められて…ズリぃ……。

いや、だからって俺が日織に……





無理、無理…

絶対に無理!







考えただけでっつーより、考えようとしただけで毛が逆立つ。







でも…







たまには無理をされる俺の気持ちも分かって欲しい…





安らかな寝息を立てる男が小憎たらしい…







もう、いつまで寝てやがる!

俺は腹が減ったんだ!!





「にゃぁん!
(起きろ!)」






思ったように声が出ない。


日織もわずかに反応したけれど、すぐにまた寝息を立てて夢に戻って行く。





むぅ…


日織の顔を覗き込む。





昨日の今日…今朝の今と言うべきか?のせいで声がうまく出せないなら…




鼻先を日織の鼻に触れそうな程に近付ける。










ペロッ
(ザリッ)





日織の上唇を舐めてみた。






「ん…。」





前みたいな演技…じゃなくて本当に眠ってる?

ならばもう一度…






ペロ…ペロ…
(ザリッ…ザリッ…)




「ぅっ…ん……」





猫特有のざらついた舌で舐められて、ひりつく感覚はあるだろうに日織は軽くうめいただけで、やっぱり起きない。





あの打算の働く無欠で無血だと思わせる男が、こんなに無防備に寝姿を晒している…





隣にいるのが俺だから?





そう思うと嬉しいような…
恥ずかしいような…





ちょいちょい





爪を出さないように気を付けながら肉球で日織の頬に触れてみる。






「……。」





反応なし…


ヤバイ。
何かドキドキしてきた!


今なら俺に主導権あり?






芽生えた小さな悪戯心がにわかに育っていく。






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