雨の名月(分岐ss置き場)
□賭の代償(前編)
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「まぁ和さんのはアレはアレで一種の才能でしょうよ」
「確かにな。あんたんはどんな感じ?」
「うーん、おれも最近やってなかったせいか、勘が鈍ってる感じですねぇ。
椿さんとの勝負の間にちょっとか腕が戻ると良いんですがねぇ」
そう言って日織は苦笑した。
そんな日織の様子に椿は悪戯っぽい笑みを浮かべて、ある提案をした。
「なぁ」
「ん?なんですかぃ?」
「どうせなら何かちょっと賭けねぇ?」
「賭け…ですかぃ?」
「そう、賭け。やっぱ真剣勝負やるなら、それなりに燃える要素は必要だろ?
それに何か背負ってた方が必死になって勘の戻りも良いんじゃねーの?
ひ・お・り・さん」
椿がおどけた様に日織の名前を呼ぶ。
もちろん煽って挑発に乗らせるために。
日織はしばらく考える様にしていたが、「そういうもんかも知れませんねぇ」と呟き、
「承知しました。賭けに乗りましょう」
椿は日織をカモに出来ると内心の喜びを抑え、
「やっぱ大人の遊びはリスクを背負ってなんぼのものだろ」
とニヤリと笑った。
「で、賭けの内容だけどよ…」
「ああ、それはおれが決めてもいいですかぃ?
何をどれくらい賭けるかによって入れ込み方が変わると思うんで…」
椿はルールを決められる事に少し抵抗を感じたが自分の勝ちを確信している余裕から「ま、いっか」と承諾をした。
「で、何を賭けるんだ?」
日織は考え込む様に口元に手を当る。
椿からは見えないように口の端をあげて笑いを噛み殺していた。
「やはり自分を追込むようなネタが良いですかねぇ。
金銭なんて稼いでる人間にはあまりリスクにはなりませんし…
となると後はプライドを賭けた勝負ってんのが燃えどころかも知れませんねぇ。」
「…チッ、金じゃねぇのか…」
「何か言いましたかぃ?」
「いや、何でもない。で、結局何賭けんだよ?」
「そうですねぇ…じゃあ、アレにしましょう!」
「アレ?」