雨の白玉(短編小説置き場)

□天使と悪魔のはかりごと
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「ぶうぇっっくしょーいっ!!」






突然の悪寒に壮一郎は盛大なくしゃみをする。





「あれ?壮一郎くん、風邪?」




「うぃ〜…。今、なんか…一瞬悪寒が…」




光谷の問いかけに、鼻を啜りながら答える。





「成瀬さん…、お若いのにずいぶんとまぁジジ臭…年期の入ったくしゃみで」




「本音思いっきり出てるぞ!言い直した意味ないからなっ!?」




「大丈夫?今夜は実家で過ごすんでしょ?ゆっくり休んでおいでよ」





「…いや、でも俺あそこで休める自信がない…」






「どういう意味だ?それに何だその辛気くせぇ溜息は…」






「気にすんなよ、オッサン…」





「本当に無理しないでね?僕別の機会にしても…」





「ああ。でも俺がちゃんと家族に和のこと紹介したいんだ…命の恩人だし…」






その言葉に男達の耳がぴくりと反応する。





「じゃあ、俺達も付いてっても問題ねぇですよね?成瀬さん」






「ああっ!?何でてめーらまで着いて来るんだよっ!?」





「馬鹿野郎…俺達だって立派な命の恩人だろうが」




「そうだよね。僕達も壮一郎のお家に行っても問題ないよね?
それとも、和くんと二人がいい理由でもあったのかな?」




「ばっ…、そんなわけねーだろ!?」






「じゃあ…そういうことで。俺達も明日成瀬さんのお宅へ窺いますから…ね?」





「ちっ……。わかったよ!………はぁ」





「あ…あの、なんかごめんね…?」





「気にすんなよ。和のせいじゃねーし…」




「そ…そう?」





「あぁ…。この溜息はそうじゃなくて……。
ウチの妹達、なんでかしんねーけど超ブラコンでさ。帰るたびにうるせぇんだよ」




「おや、妹さんがいるんですかぃ?」





「ああ、それも3人もな。
上が双葉(中3)、真ん中が三月(中1)、下が四季(小6)だ。
もう3人集まったら喧しいのなんのって…」




「またエライ歳のはなれた妹だな…」





「俺が世話を焼きすぎたからなのか…?」





「壮一郎くんならおしめ代えるのも上手そうだもんね」






「人の妹使ってアホな想像すんじゃねぇ!この…馬鹿筋肉がっ!」





「壮一郎くんもなんだかんだ言って妹さんのこと大事なんじゃない」




「な、和…。これは…」






「そうですね、和さん。
成瀬さんは立派な…シスコンですね。…しかもロリコン」





「勝手なこと言うんじゃねえっ!変態素浪人がっ!」







「まあまあ…。あっ…壮一郎くん、そろそろ行かないと…」






「ん?あ、ああ…」






「じゃあ、僕達明日お邪魔させて貰うから…ご家族によろしくね?」






「ああ。じゃ…いってきます」






さらにひとつ、大きな溜息を吐いて壮一郎は歩き出した。




 
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