NARUTO 短編
□presence−存在−
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綱手には大反対されたけど、1年かけてやっと入隊が決まった。
それからすぐに、オレたちはこの小屋に引っ越した。
ほとんど誰もやってこないこの森の中で、やっと2人の時間を手に入れたんだ。
任務はあるものの、もう監視される心配はなかった。
「おいナルト、あれ…」
「ああ」
オレたちが着く頃には、もうすでにほとんどの人が集合していた。
「よし、では皆聞いてくれ」
険しい表情の綱手の声に部屋は静まり返る。
「今、雲隠れの里の忍がこちらに攻めてきている。理由は分からないが、とにかく里の中に入れるわけにはいかない。まずはお前たちに頼みたい」
はいっ、という声が上がる。
「北はカカシ、東はヤマト、南はナルト。そして西はサスケ。以上4名を隊長にする。それぞれの部隊は続け!」
「ちょ、綱手!意味分かんねぇよ」
なんで、オレたちが隊長なんて。
そりゃあ、今までに何度かやったことはあるけれど、こんな大きな任務では初めてだ。
「私が決めたんだ。文句は言わせん、行け!」
ったく、このクソババア。
綱手はオレが睨んだことなど気にも止めず、さっさと行ってしまった。
「気をつけろよ」
少し見上げれば、そこにはいつもと変わらぬ意地悪そうな、でもとても優しい笑顔があった。
「…お前もな」
「隊長!敵を確認しました。こっちに向かっています」
「どのくらいいる!」
「、100…はいるかと…」
多いな。
てっきり北が集中攻撃を受けているものだと思い込んでいたナルトには、その数字は意外だった。
「どっちからくる」
「西です。北で一戦した後、西回りでこちらに。東にも少し行ったようですが」
西…、ということはサスケの隊は破られたということか?
いや、まだそうと決まったわけでは…。
「状態は!可能なら増援を呼べ」
「北と東からは少し来れますが、西は」
「いい!こっちから出向いてやる、皆続け!」
戦っている時は何も分からなくなる。
音も感覚も、思考さえも取り払われたような。
ただ目だけで敵を捉え、刀を構える。
「死」ということを考えたことがないわけではないが、自分はまだその時ではないという、どこから湧いてくるのかも知らない自信があった。
修行を重ねて実力が上がったというのもあるが、それだけではない。
今は守りたい、いっしょにいたい人がいる。
その人の存在は自分の中でとても大きくて、かけがえのない大切な人。
「でもね、ナルト」
これは1人の忍として言わせて。
ひと
他人を大切にすることはいいことだし、私にだってそういう人はたくさんいる。
ナルト、あなただってその中の一人。
でも…。
もしその人がいなくなってしまったらあなたはどうなるの?