NARUTO 短編
□presence−存在−
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「ナルト!敵がひいてるぞ!」
いつの間にか援護に来ていたシカマルが言った。
「よし、もう追う必要はねぇな」
「ったく、めんどくさいことしやがるぜ…」
「それよりナルト。負傷者は早く医療班のところの連れて行ったほうがいいんじゃないの?」
両腕にけが人をかかえたチョウジが言った。
「そうだな。じゃあ、全員戻るぞ」
部屋に入ると、医療班が治療にあたっていた。
思ったより負傷者は少ないようだった。
「ナルト…」
振り向くと、後ろにサクラが立っていた。
「サクラちゃん、おつかれ」
綱手の元で腕を磨いた彼女も、今は木ノ葉の里の大切な医療忍者だ。
「こっちはあともう少し。それよりナルト…」
「サスケ、無事だったか?」
「…ああ」
病院隅の座っている彼の隣にそっと腰を降ろす。
足元を見つめる目はいつも以上に闇に染まった色をし、頬には明らかに彼のものではない血が飛んでいた。
サスケ…。
『帰ってきてからのサスケくんの様子が少し変なの…なんだか聞きにくくて。ナルトにだったら話してくれるかも』
サクラちゃんの言葉がよみがえり、目の前のコイツを見つめる。
「…帰ろ、サスケ」
「サスケ」
「…」
「サスケ」
「あ、…ああ」
「聞いてた?」
「悪ぃ…、ナルト」
「うん?」
「抱きしめていい?」
言うより早く、サスケの胸に抱き寄せられる。
一見変わらないようにも見えるそれ。
でも、これじゃ…。
抱きしめられているのに、自分が彼を支えているように思えて仕方がない。
こんなにも想っているのに、オレの声はもう二度とサスケに届くことはないのかも知れない。
そんなことを考えるとすごく寂しくなって、唇を強く噛み締めた。
「サスケ、上忍になったらこんなこといくらでもあるって、分かってたじゃん。それでもお前…」
「ああ、分かってる。それでもお前といたいと言ったのはおれだ。それは今でも変わらない」
今度こそ、涙が出た。
「…なんで、お前が泣くんだよ」
「…っ」
「?」
「サスケ、ご飯。冷めるってばよ」
今はただ、君のためだけに笑いつづけよう。
こうしてまた僕らは
離れられなくなるんだ。