NARUTO 短編

□自転車
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・現代?















知らなかった。

こんなに近いと、

こんなにもドキドキすること―。

どうか どうか

気づかないで。





「おい、ナルト。乗ってくか?」

その言葉に何のためらいもなく返事をし、

何のためらいもなく彼の後ろの荷台にまたがった。

しかし、今になって思う。

2人乗りって、どこを掴めばいいんだろう…。

さっき信号で止まった時は、思わず背中にしがみついてしまったが
その後またすぐに引っこめてしまったので、今は彼とオレの間で2本の腕は行き場もなくおろおろしている。

「寒くないか?」

「っ、…うん」

「そうか」

それだけ言うとまた前に向きなおり、ぐいぐいペダルをこいでいく。

うう〜、いきなり話しかけるから、変な返事しちゃったってば。

ああ、どうしたものか。

早く家に着けばいいのに…。

ふと背中ごしに彼の手に目をやると、少し赤くなっていた。

「…サスケ」

「ん?…っ!」

「わっ!!」

次の瞬間、自転車がグラリと傾く。

なんとか体勢を整えて、自転車はまた走り続ける。

「なんだよ、急に」

「…くない、」

「は?」

「寒く、ないってば…、」

彼の漆黒の瞳は少し驚いたように見えた。

でもすぐにそらしてしまう。

「全然」

ふふんと笑った彼の首元でマフラーが静かに揺れた。

「…まだ着かない?」

「まだだな」

独り言のような2人の会話と、ペダルをこぐ音だけを乗せて

自転車は静かに行く。

耳をすませば、すぐ目の前の鼓動も聞こえそう。

オレのはもう手遅れかもしれないけど、

だけどまだ気づかないで。

もうちょっとこのまま腕をまわしていたいから。








きみとなら、寒さなんて
吹き飛ぶよ。




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