NARUTO 短編

□so beautiful
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・現代?















何度目覚めても、真っ黒な視界に嫌気がさす。

どうしてだろう、
眠るのはあんなに苦労するのに。

ああ、早く明るい場所に行かなくちゃ。

マンションの薄っぺらいドアなど、簡単に開くのだ。

時計も確認せずにジャージに着替え、ベッドから抜け出す。

そっと、温かな指先がオレに触れた。

少し眠そうな、でもまん丸な2つの蒼いあめ玉がオレをとらえる。

「どこいくの、サスケ?」

「…目が覚めたから、散歩に行くだけだ」

「じゃ、オレも行く」

オレに許可もとらずに勝手に着替え始めるナルト。

ひとりで行くつもりだったのに。

ひとりがいいのに。

来るなと言えばこいつは来ないだろうか?

外は寒いよ、なんて言いながらオレの首にマフラーを巻き付ける指が、少しだけ頬にあたった。

ドアを開くと、思ったよりもずっと白い世界が広がっていた。

不覚にも、きれいだなんて思ってしまった。

何か話しかけられるかと思ったけれど、ナルトは案外おとなしくオレの隣を歩いた。

信号で止まったときに、ナルトはオレの指に自分のそれを絡めた。

誰も見てないからいいでしょ、と笑う。

(ごめん)

喉元まで出かかった言葉は、信号が青になるのと同時に腹の奥底まで沈んでいった。



視界の開けた砂浜に出た。

だれもいない、どこまでも広い海。

昇ったばかりの日の光が目にしみるのか、ナルトは目を細くした。

海水が爪先にあたるくらいの場所で立ち止まる。

足元に打ち寄せる波は、透明でキラキラ輝いていた。

きれいだ。

きれいすぎる。

歩き出そうとしたオレの腕に力が加わり、前に出した右足は虚しく元に戻された。

「帰ろ。今日は休みでしょ?」



きれいだ。

きれいすぎる。



きれいなものを憎んだはずなのに、不覚にもこの世でいちばんきれいなものに救われる。







オレをこの世界に繋ぎ止める、
唯一の存在。




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