NARUTO 短編

□失くしもの
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今年始めての雪が降った。

サスケは何ともとれぬ表情でそれを眺めた。

「寒いから、こんなに早く起きなくてもよかったんだってばよ?」

「別に構わない…」

「ってもな…あ、ほら。またんな格好して。これ着てろって言っただろ」

上着を渡すと、サスケは少し笑った。

胸がチクリと痛む。

オレの変化に気づいたのか、サスケはじっとオレを見つめた。

何も変わらぬあの瞳で。

「ナルト?」

何も変わらぬあの声で。

意識がとびそうだ。

「…、じゃあオレ行ってくるってばよ。いつも通り大人しくしててくれってば」

彼から逃げるように、玄関へ向かう。

「なあ、ナルト」

冷たい指が、オレの手首を捕らえた。

「前から訊きたかったんだが、これはオレだよな?」

サスケの左手には、7班の集合写真が握られていた。


どうして?


それはサスケがオレの家に来ることになった時に、今まで一度もその場所を離れることのなった写真は、
あっさりと棚の奥にしまわれてしまったのだ。

それをなぜ?

「どうしたんだってばよ、それ」

心臓がうるさい。

「ナルトと…、オレだろ。それとこの2人は一体」

オレの中の“オレ”が

「いいんだってばよ、これは。自然に思い出すまで」

いやらしい笑みを浮かべて

「でも、オレは…」

そして囁くー…

「じゃ、行ってくるってばね」

逃げなければ

「ナルトっ」

早く、ここから


「…好きだ」


まともに振り返りもせずに家を飛び出す。

サスケに過去を取り戻して欲しいと思う気持ちと、
まだここにいて、
ずっとオレとふたりだけの世界で生きていきたいと思う気持ち。

どちらが正しいかなんて、分かっている。

分かっているのだ。


オレは醜い欲の塊だ。








失くしものをしたのは、お前?
それとも、オレ?






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