花言葉シリーズ

□ポインセチア
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「サスケ、おめでとうな」

「お幸せに」

ナルトは、みんなの輪の中で質問攻めにあっているサスケをぼんやりと眺めた。

そう、彼は明後日結婚する。





突然のことにみんな驚きはしたものの、サクラちゃんやいのが同期でもお祝いしようと言い出し今に至る。

お祝いと言っても、みんなただ単にわいわい集まって飲みたかっただけかもしれない。

「おいナルト、どした?こっち来て、飲もうぜ」

騒がしい居酒屋の中でも、キバの声はよく通った。

「あ、わり。オレ、トイレ行ってくるわ」

立ち上がる瞬間、不思議そうに見つめるキバの顔が目の隅に映った。


なんでこんな気持ちになるんだろう。

どうしてみんなみたいに、笑って言えないのだろうか。

オレってば、すげぇヤなヤツみたいだ。

鏡を覗くと、苦しそうな顔をした自分がいた。

無理矢理笑いかけてみると、今度は涙がこぼれそうになった。

「…ナルト?なにやってんだ」

「っ!!サスケ!?」

「んなびっくりしなくても。どうかしたか?」

「な、なにが…?」

サスケの手がすっと伸びて、オレの頭をぐちゃぐちゃ掻き回した。

「泣きそうな顔してるから」

頭に乗せられた手を払い、サスケの顔を見上げると、視線がぶつかった。

それを慌てて反らすオレ。

「別に…。顔洗ってただけだし」

サスケはふーん、と言って腕を組み、壁にもたれ掛かった。

「お前はさ」

「?」

「言ってくれないんだな」

「な、なに…」

扉の向こうから、キバたちの笑い声が上がる。

嫌な汗が背中を伝った。

不意にまたサスケの手がオレの頭に触れる。

それさえも、愛しくて。

「悪かったな。なんでもない」

サスケはオレを安心させるためか少し笑って、トイレを出て行った。

サスケの指が離れる瞬間

何も始まってすらないくせに

ああ―、これで最後なんだな、って思った。

パタン、とドアが閉まると、両手で顔を覆った。





本当に好きならば、貴方の幸せを願わなきゃいけないのに。

貴方に笑っていてほしいと思わなきゃいけないのに。

“ずっといっしょだよ”

そんなことあるはずないのに。

知った気でいた。

わかった気でいた。

現実を突きつけられた時。

堪えられない息苦しさ―。






(ポインセチア)
→祝福する






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