NARUTO 企画
□Hot Chocolate
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サスケの家がやけにせまくなると、ああもうこんな時期か、なんて年寄りくさいことを考える。
それにしてもあちこちに積み上げられたダンボールには圧巻だ。
まあそのおかげでオレはこうして高級チョコをむさぼることができるわけだが…
「気にくわねぇってばよ」
「何か言ったか、ナルト?」
机の向こうがわでお茶をすすりながらサスケが言う。
「なんっで、お前ばっかこんなにチョコレートもらってんのにオレは綱手のばあちゃんの余りもん一個なんだってばよ!?」
「サクラにももらっただろう?」
「あれはお前のついでだってばよ。サスケが食べないからしょうがなく分けてくれたんだってば」
納得できない、
…と言えば嘘になる。
確かに、サスケは頭もよくて何でもできるし、その上顔もかっこいい。
女の子より白くてきれいな肌に潜む切れ長の目でみつめられたりしたら、オレだってどきっとしてしまうくらいかっこいい。
でもオレはいつものすました顔なんかよりずっとかっこいいサスケを知ってる。
寝起きのボーッとした顔、
オレの不意討ちに少しだけ目を開いてびっくりする顔、
真剣に料理する横顔。
そんなサスケ見たことねぇだろ、なんて心の中で自分が口にしているチョコレートの贈り主を鼻で笑ってみる。
「ああそうだ、ナルト」
「なっ、なんだってばよ」
急に話しかけられたので、心の声が漏れていたのではないかと不安になる。
サスケは、チョコの山の陰から1つの小包を取り出した。
「これ、お前にやる」
「お前にやるって、サスケ、チョコは全部食っていいって言ったってばよ」
「ああ、そうだ。これはオレからだ」
「へ?」
「これはオレからのだ」
口の中のチョコレートが一瞬にして溶けていく。
ほら、こんな意地悪なサスケの顔はオレだけのなんだ。
「あのー…、サスケさん。つかぬことをお伺いしますが」
「何だ?」
「あの…、チョコじゃないんですね」
「ああ、チョコはオレがもらったので十分だろ。オレはお前の頭が心配だ」
「だからってバレンタインに忍術本って…」
「苦いか?」
「…甘いです」