NARUTO 短編

□blind
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「…ハァ、ハ」

「ナルト?…ここは」

大丈夫、

大丈夫だから。

その言葉とは裏腹に、繋いだ手を一層強く握りなおす。

「ハっ…、」

3人、4人…、いや少なくとも5人の気配は感じる。

「…っ」

オレ1人なら相手が何人いようと逃げ切る自信はある。

しかし今は違う。

「…ナルト」

「なんだってば?」

「もう、…やめろ」

汗が額から流れ落ちた。

「何言ってんだっては!」

気配くらい分かる。

光は見えなくても、オレだって忍なんだ。

「サスケ…」

「早く戻れ。五代目には、オレが逃げたのを捕まえようとした、と」

「そんなことっ、できるわけねえだろ!」

「ナルト…」

サスケの手が頬に触れ、唇に温度を感じた。

「ありがとな」

「!?」

包帯から染みた雫がサスケの頬を伝っていく。





「ぁ…、サスケっ」

何度も何度も唇を重ね、互いの悲しみの痕を消し合う。

そんな顔すんな、オレはお前の笑顔が見たい。

「見えないくせに?」

冗談ぽくそう言うと、サスケはただ優しく笑った。





あれから何れ程の時が経ったのか、

ずいぶんと遠い昔のように感じる。

最期にあんな顔をさせてしまったこと。

今でも後悔してるんだ。

いくら時が経とうとも、君の記憶は消えることなど知らず、

君の声は時々耳元で聞こえて

何よりも別れの時に触れた君の手の温度は今もオレの胸の中にある。

オレは弱い人間だから、

君を喪ってまでどこかに逃げることも、命を絶つことさえできなかった。

結局いつも君に置いていかれてしまうんだ。

「…サスケ」

沈んでいく意識の中

君と同じ、光を喪った瞳の奥で夢をみる。

すぐそこに君がいるのに、オレの腕ではとどかない…。

必死で掴もうとするオレを見て、サスケは柔らかく微笑んだ。

オレの大好きな顔、大好きな人。

だけど、どんなにがんばってももう二度と君に触れることは許されない。





どうしてだろう。

どうしてオレはまだ

死にながら生きているのだろう…。







それはもう屍。



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