Short story

□隣の席のあいつ
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おかしいと思わへん?

うちの隣の席のやつ、怪我もしてへんのに腕に包帯巻いてんねんで?
この前「毒手やで〜。」とか言うて後輩脅かしてたし・・・。
何が毒手やねん。あほくさ。
おまけにそいつの口癖ときたら









「ん〜っ!エクスタシー!!!」

ほらまた。
それ、数学の問題解きながら言う単語やないやろ・・・。



「なぁ白石。」
「ん?」

まだ数学と戦っとる白石は生返事を返してきた。
こっちに興味・感心の半分もないって感じや。
だから、わざわざ隣に体向け直して言うてやんねん。

「あんたの口癖、日本語訳したらめっちゃヤバくなるの自覚しとるん?」
「・・・・・・。変か?」







今度はちゃんとこっちを見た白石に内心ニヤリとしながらも、うちはそんなこと微塵も出さへん。
もともとポーカーフェイスは得意なんや。


「変やで。めっちゃ変。」
「そうかぁ?」
「そうや。一般的な日常生活で、そんな単語何べんも言わへんって。めっちゃエロ用語やん!」
「女がエロ言うなや〜。」


そう白石は笑ろうたけど、うちが言うたことを真剣に考え出した。


そうやで白石。常識に基づいて、そのごっつええ頭で考えんのや。
そして自分が、少しでもおかしないようにするんやで。





「ん〜〜〜・・・?んっ!
でもエクスタシー感じてるんやから仕方ないやろっっっ!」
   ガンッ

うちは思いっ切り机とにらめっこすることになった。






いきなり机に突っ伏したうちを、白石はめっちゃ不思議そうに見てる。

「どないした?具合でも悪いん?」

あんたのせいやーーーっ!!!
とか思いながらもポーカーフェイス、ポーカーフェイス。


「いや・・・何でもあらへん。」
「ならええけど。」

安心したらしい白石は、また数学に戦いを挑むみたいや。
そんな横顔に最後の一言。



「白石、あんた顔ええんやから自分大事にしぃや。」
「おう!おおきにな。」



爽やかな隣人の返事にため息をついて、うちは窓の外に広がる青い空を見上げる。

ほんま、大事にしてもらわな困るでー・・・。








「うち、好きな人が変人なんはイヤなんやけど。」









ボソリと呟いた言葉は、昼休みの雑踏の中では隣に届くわけもなく・・・。
相変わらず聞こえるエロ用語に、うちはまたため息をついた。


まっ、そんなとこも含めて好きになったんやけどな。




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