リレー

□いち
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(´_ゝ`)




「で、だ」

「? ──うわあっ!」


僧侶は青年の襟元を強く握り自分の目の前まで引き寄せる。

すぐ前にある威圧的な僧侶の顔面を見て青年は猫のように体を縮こませた。



「何を言いたいのか…わかるよな?」

「わかりますわかります! 僧侶の秘密もう誰にも言わないから!」


目をきゅうと瞑って否定の意味で手を左右に振る。

あわよくば僧侶の眼球にHIT!しないかなんて淡い希望を託しながら手を振りまくった。

──残念ながら叶わなかったが。



「違う! ……、ていうか、え? ──お前そんなことしてたんだ」

「ひぃっ! ごめんなさいごめんなさい嘘! 嘘ですタバコヤだぁ熱い熱い!ごめんなさ──」




……


「……とにかく。勇者の居場所はどこかって聞きたかったんだよ」


タバコをぷっ、と床に落として靴底でねじ消す。


青年の気分は踏み潰されたタバコのようで、恐怖でぷるぷるしながら口を開いた。


「うぅ……俺が知ってるわけ…」

「あ゙ぁ!?」

「ひぃぃ! こ、ここにはいないよぅ!!」


「…ふぅん」

「ほほほ本当にいないんだって!」



僧侶は部屋全体に響くほどの舌打ちをして、
青年の襟元を勢いよく離した。

その反動で青年は固い床に尻餅をつくハメになる。


「──あのクソガキ。ぜってー殺す」

「あ、あのー…一応僧侶は勇者のしもべな「あ゙ぁ!?」

「ひぃごめんなさい!!」


青年は亀のように両手で後頭部を押さえ、曲げた両足の間へ埋(うず)めた。


それを視界の端にもいれず僧侶はカッカッと大きく靴の音をたてて部屋を出ていく。



足音が小さくなるのを確認して青年が顔をあげ、1メートルほど先の床を見つめた。



「……、はぁ。もうなんか本当に冒険に出てくれないか「おい」


「──いぎゃああっ!」



青年はすぐに元の亀の形に戻りカタカタ震えだす。

なぜならば今、部屋を出ていったはずの僧侶が戻ってきたからだった。


───早いっ! 戻ってくるの早すぎ!



確かに靴が床を踏む音が遠ざかっていくのが聞こえたはずなのに、なぜ靴音も立てず戻ってくることが出来たのか。

青年は足の間の暗闇を凝視しながら考え、そして思い付いた。



「そうか! ずっと部屋のすぐ外で足踏みを──」

「や! 悪魔ー!」


ガバッと顔をあげると同時に目に飛び込んできたのは、僧侶の腕に吊り下がった少年だった。

正確には僧侶に背中側の服を掴まれ上に上げられて、宙ぶらりんになってる。


少年はまだ年端もいかなそうな幼い顔立ちで、小さい体を脱力させて青年──悪魔に向かって笑顔を見せた。


「勇者!」

「や、あははは! ツボのなかいたのにみつかった! 僧侶コノヤローいるのわかっててツボガンガンたたいてたなー!」

「壺って……、あの、廊下奥の部屋にある…」

「そ! あのでかいやつ!! あはははー!」



───てことは何だ、僧侶はやっぱ廊下奥の部屋に行ってるってことじゃん。
ここにあの短時間で戻ってくるとかおかしいじゃん。

…人間、か?


悪魔は脳をフル活動させて色々考える。


答えを出す間もなく、僧侶が青年に近よってきて、なんの躊躇もなく蹴りあげた。


「あ痛!」

「おら、勇者は後で絞めるからいいとして「えーなんでー?」…お前も一緒に来い」

「なん、で!」


「こいつが言うには「かくれんぼしてたんだよー」……だから、魔王ン所に報告しに行くんだよ。多分そろそろ軍隊始動させて勇者を探すから」

「えへーまーちゃんにまだみつかってないんだよ」



体が宙に浮いてるのにも関わらずいつも通りの少年──勇者はきゃたきゃたと笑う。

見習わなくては、と悪魔は自分の手を強く握った。



僧侶はまだ立たない悪魔をもう一度蹴って、無理矢理立たせた。


「お、俺が行く意味は…?」


悪魔がよた、と立ったので僧侶は魔王の所へ向かうべく、悪魔とは逆を向いて歩みを進めたが
悪魔の問いかけに一度立ち止まり



「……さぁな」



にやり、と笑った。


悪魔が背筋に何か冷たいものを感じとったのは言うまでもない。



「…ついて行くよ……」
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