リレー
□いち
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(´_ゝ`)
「こっ…これは…!」
悪魔がはさ、と上質な紙を落とす。
気づけば、自らの指先は小刻みに震えていた。
「悪魔ー、どうしたのー?」
勇者がすぐに悪魔にかけより、うつむき影で暗くなった顔を覗き込む。
その際上質な紙は勇者の足の下へ。
「あっ…―――!!」
「おい、どけ」
神がかりな速度で僧侶が紙を勇者の足の下から救出した。
足もとが急に滑ったように感じた勇者は対応できず、ぎゃん!と叫んで仰向けに倒れる。
「いたいなぁもう! 僧侶のばかー!」
空中を蹴るように手足をぱたぱた動かし精一杯不満なことをアピールさせた勇者。
しかし僧侶の意識が勇者に向かうことはなく、手紙に釘付けのまま。
気になった勇者はそっと、悪魔に話しかけた。
「…ね、なんてかいてあったの?」
悪魔も僧侶の後ろから覗き込んで、勇者に聞こえる程度の音量で言う。
「き…
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謹啓
春暖の季節と相なり、樹木が芽吹き若やいだころとなりました。つつがなくお過ごしのことと存じます。
さて、このたび私こと、 まおぅ は都合により自室を転居いたしましたのでお知らせ申し上げます。
新・自室に何か用事がございました場合は、ぜひ探してみてくださいませ。
ヒント: まきゅうのなかだよ
謹白
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“まおぅ”と“まきゅうのなかだよ”と書かれている字体は、明らかに他の字体とはことなっており、まだ漢字をしらない幼い子供が書いたようであった。
次第に僧侶の全身が震え出し、顔の影が一層強くなった。
口にくわえていた煙草の灰は床にぽとりと落ちる。
「何が……魔宮のなかだよだ………いつのものことながら…ぁぁ!」
「ちょ!僧侶!!」
「いぃーーーーかげんにぃぃぃ!」
僧侶はいい加減に、と言い残して部屋を飛び出していった。
残るは火のついた煙草とその灰のみ。
勇者は鬼の首をとったような満悦な笑みで
「僧侶ー! ろうかははしっちゃダメなんだよー!」
と、言ったちょうどその時。