史上最強の学園

□T.さて、私は誰でしょう?
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現在の時刻は人々が、あらゆる生物が寝静まり闇の帷(トバリ)に包まれる時間帯。
それぞれの部屋でそれぞれがその日、一日の疲れを取る為の睡眠を取っていることだろう。
大抵の者達は寝ているような深夜。
そんな深夜に薄暗い廊下を一人の男子生徒が走っている。全速力で。
目的の部屋を見つけると鍵を開けて物凄い勢いで扉を開け、入ってすぐに扉を閉めた。
ここは住宅街の南区にあるごく普通のマンションの一室。
そこは勝手知ったる自らの部屋。

ガチャガチャ
ガタンッ

カチ

オートロックではないため震える手で鍵を閉めると冷たい扉に背をあずけてズルズルと下にしゃがみ込む。

「・・・っはァ、はっ、はっ、はっ、はぁ〜・・くっ・・・は、っ・・・・・なん、何なんだアイツは・・・・っ」

その男子生徒の目には深い恐怖の色が浮かんでいた。
アイツに鍵など無意味だと分かってはいてもかけてしまう。これはもう習性みたいなものだ。速く結界を張らなければ。

アイツは何処(ドコ)へでもやって来る。音もなく、気配もなく、何も無かった場所から忽然(コツゼン)と姿を現す。

そして何をするわけでもなくジーッとこっちを見つめてくる。
俺はいつもその視線から逃げようとするのだが何か途轍もない力に抑えつけられているように躯(カラダ)が自由に動かない。

その視線には殺意など一欠片(ヒトカケラ)も入っていないにも関わらず生物としての根本的な本能といえるものがそれに恐怖を覚えるのだ。

そして俺の精神がギリギリになるというところでまたもや忽然(コツゼン)と目の前から消える。

それだけのことだった、

今までは。


だが、今日はいつもと違った。
俺に、話しかけてきたのだ!

「今晩は」

と。
その瞬間、俺は軋む躯(カラダ)を無理矢理動かしてここまで逃げてきた。


しかし、呼吸も落ち着き、精神的にも落ち着きを取り戻してきた男子生徒の耳に、鼓膜に、脳髄に、彼が今最も恐れている音が染み込んでくる。
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