史上最強の学園

□V.天上の彼の人【生徒会(ストゥル・ヴァルズ)】とは…上
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学園都市【Blue Rose】には、街や校舎や公園にぐるりと囲まれた巨大な森がある。

年に何回か森に深く入り過ぎて迷って帰って来れなくなる者もいるほどの広さだ。
行方不明者が出るその度に捜索隊が派遣される。
その捜索隊は少人数の魔術師(マジシャン)の精鋭達。
普通、捜索は多少多めの人数でやったほうが良いと思うだろう。
しかし、この森に無闇に魔法技術(マギスキル)の安定しない者達まで捜索隊として導入すると、捜索に入ったはずの捜索隊員がそのまま行方不明になるという負の連鎖に陥ることから捜索隊の人数を増やすことが出来ない。
もしも、捜索が難航し、辺りが暗くなってしまった場合やかなり時間がたっても見つからない場合は生徒会(ストゥル・ヴァルズ)が捜索に乗り出す。
生徒達もといBlue Roseの住人を守のも彼らの仕事の一つなのだ。

このようなことが度々起こるのでこの森は【彷徨いの森(メイズ・フォレスト)】と呼ばれている。

危険なので一般の生徒は ある一定の場所までしか入ることが許されてはいない。
ただし、生徒会(ストゥル・ヴァルズ)に限っては森の奥まで行くことを許されている。
彼らだけは森を迷うことなく目的の場所まで行く
ことが出来るからだ。
そして彼らが彷徨いの森と呼ばれるこの森の奥まで迷わず行けるその理由はただ一つ。

彼らの生活している寮【万李館(バンリカン)】が彷徨いの森の中心に存在しているからに他ならない。















通称:彷徨いの森(メイズ・フォレスト)。

その森を上空から見ると森の真ん中辺りにぽっかりととても大きい湖があり、その湖の中心に一見浮き島があるかのような状態で広い土地が在る。
その土地の上に在る建物こそが、

Blue Rose学園の頂点に立つ者達が住まう寮、


【万李館】。


一般の生徒からすると手の届かない場所。
広い土地にかなりの大きさの建物。
煉瓦造りの洋館と、木造の屋敷が不思議なバランスで成り立っている。
そんな場所の洋館側【談話室】。そこに万李館に住んでいる16人全員が集まっていた。
そこは今、途轍もない狂気に満ちていた。
狂気を宿した目を爛々(ランラン)と輝かせた者達が総勢14名。
その視線は全て一カ所に集中している。
16人いる中の残り2人のうちの1人は、今の状況を丸無視して優雅にお茶を飲んでいる。ちなみに紅茶のカップで飲んでいるが、実際に飲んでいるのは玄米茶。
もう1人は狂気に満ちた目に、今にも刺殺去れそうな程の凶悪な視線を浴びながら、


哀れで、自業自得な男は床に額を擦りつけながら必死で土下座していた。


下級精霊(パラミア)達が力在る者達の怒気に反応して空気中にバチッバチバチッと静電気のような光が走る。
それ程の凶悪な空気の中、土下座している男を救うかのように澄んだ鈴の音のような声が緊迫した空気を解きほぐすように響いた。
その声は1人静かにお茶を飲んでいた分厚い丸眼鏡の小柄な少年。ブラックブラウンの髪を持つ、至って普通の子供。強いて言えば後ろ髪が動物の尻尾のように異様に長いことが印象に残るだろうか。
それ程に極々普通な眼鏡少年。
そんな彼の手にあったカップは、いつの間にか長テーブルの上にあるソーサーの上に置いてある。

「皆さん、もう良いじゃないですか。そろそろ許してあげませんか?」

狂気の光を目に宿していた14人は目から狂気の色をほんの少し薄めながら声を発した少年の方を見る。土下座していた男もガバッと勢いよく頭を上げてやはり少年を、救いの主を潤んだ目で見つめた。

「何も、これくらいでそんなに怒らなくても良いじゃないですか?」

ふんわりと微笑んで14人の先輩達に話しかける。
それに答えたのはその中で一番、目に狂気を宿らせていた男。
色素の薄い紅い髪に、涼しげな目元に線の細い甘いマスク。耳元で囁かれれば女性だけならず男性でも落ちてしまうのではないかという程の美声を怒りに震わせながら言った。

「だがな、癸鳥(キトリ)。コイツはやってはいけない事をしたんだぞ!お前が一番怒っても可笑しくない状況なのに・・・何でそんなに優しいんだ!」

少し解れた空気に、また緊張の糸がピンッと張り、癸鳥という少年は少しずれた問いに途方に暮れたように答えた。

「いや、そんなこといわれても・・・別にまた作れば良いだけですし。捨てられたわけじゃないですから・・・・・それにきちんと管理してなかった僕も悪いんです」

少ししょんぼりとした癸鳥に慌てて他の人達も声を掛ける。

「違うわ!癸鳥ちゃんが悪いんじゃないわよ!!」

「そうだ、癸鳥はこれっぽっちも悪くない!悪いのは先輩だよ!」

「こいつが何もしなければこんな事にはならなかったんだ」

などなど、立っている人達は今だに正座したままの男を指し、口を揃えて非難しまくる。
それを黙って聞いていた正座したままの男は何もいえず下を向く。
まるで犬が怒られて耳と尻尾を垂らしているかのように。
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