史上最強の学園

□T.さて、私は誰でしょう?
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リンッ

其れは涼やかで、
其れは清らかで、
美しく澄んだ鈴の音だった。

この音の主はアイツだ。

たまにアイツが消えるときに聞こえるのだ、この音が。
そして思った通り、

忽然と男子生徒の前にアイツは現れた。

闇夜のような漆黒のコートを身に纏(マト)い、コートについているフードを目深(マブカ)にかぶり、純白の目元だけ隠れるような仮面をつけて、アイツは目の前に立っていた。
男子生徒にとっての精神の安定を脅かす、恐怖の根源が静かに口を開く。

「何故逃げるんですか?戦闘系列(ナイト)【紅緋(カーネル)】No.10木祁 陽(コギ ヨウ)さん」

そして黒い手袋を履いた手でフードを脱ぐ。
フードの下から現れたのは美しい漆黒の髪。
旧文明では日本人をはじめとして中国人や韓国人などのアジアの人々が持っていたと言われる黒い髪。今では伝説、お伽話の中でしか存在しないと思われている。

もしくは・・・

いや有り得ない。きっと闇のせいでそのように見えているだけなのだ。
太陽の下で見れば濃い茶色や蒼い髪なのだ・・・・きっと。

顔につけている白い陶器のようなもので出来た仮面が見えた。その仮面には血のような紅(アカ)で、いわゆるピエロの悲しいような楽しいような顔がペイントされていて、不気味さが際立つ。

「あ、自己紹介遅れました。【道化師(ピエロ)】No.08名前(コードネーム)はアウロズ・クロウ、と申します。どうぞお見知りおきを。何なら【断罪者(ジョーカー)】と呼んで頂いても構いません」

純白の仮面をも取り払いそのまま美しく紳士のようなお辞儀をする。

その時、丁度蒼白い光を放つ笑っているかのような三日月が雲の隙間から出てきて暗闇の支配する部屋に光を入れる。

そして木祁 陽(コギ ヨウ)と呼ばれた男子生徒は漆黒の使者の顔を見て驚愕を隠せないでいた。

最初に目がいったのは褐色の肌。次に顔。


「お・・・お前は」


顔は知っている。
しかし、俺の中ではその他大勢の一人。偶々(タマタマ)そこにいたから、

蹴った、

殴った、

罵倒した。

実行したのはつい最近。
俺の目につく所にいたのが悪い。
アイツはゴミ。
才能が無い奴はカス。
ただの俺達のストレス解消の道具。
この俺より全てが劣る下等生物。
この学園にいる価値はない。
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