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□お題
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なんであの時、嫌いなんて言ったんだろう。
嫌いじゃないのに―――

 ソウルと喧嘩をした。
きっかけは些細な事。鍋を焦がしてしまった事から色々我慢してきた事が、これでもかと言うくらい出てきて止まらなくなった。
引くに引けなくなった言い争いを終えるために、私は最後に言った。

「もういい!嫌い!」

胸がスッとしたけれど、なんだか後悔してる。怒って、そのまま部屋に行った後も、もやもやと考えていた。
私からあんなことを言った手前「ごめん」が言えない。
言えたらすっきりするのに…
しばらくすると、ドアをノックする音が部屋に響く。
「マカいるのか?」
返事をしないでいると続けた。
「聞いてるだけでいい。さっきは悪かった。」
ドアを背にベッドの上で蹲っていたから気付かなかった。
「ごめん」
いつの間にか部屋に入ってきたソウルに後ろから抱き締められ、はっとする。
「なに言ってんの!私は嫌いだって、さっきから…」必死にもがいて腕の束縛から逃れようとした。
「嘘つき。嫌いだったら、無理矢理でも逃げてる」
そんなこと出来ないのを知ってて、そういうことを言うんだ。

「やっぱりマカじゃなきゃダメだ」
 さっきまで意地張ってた自分が馬鹿らしい。
抱き締めてくる手に、自分の手を重ねて握り返した。
さっきまでのもやもやした気分はどこかに行ってしまい、温もりが背中を伝い心まで温かくさせる。
「私こそ、ごめん」
素直にさせてくれるのは、あなたの言葉。
偽ることは、もうやめよう。大好きなあなたには敵わないから。
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