便利屋さんと一緒

□第3章
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4 一松とチョロ松











「口割らないねぇ、ヒヒッ」

楽しそうに見つめるその先には

息が上がりボロボロになった筋肉隆々の男

まだ笑う余裕があるのか口元は緩んでいる

「俺が、簡単に…話すと思うか。」

「思ってない。」

尚も楽しそうな一松に少しイラつきながら目線を外さない

「一松、まだ?」

部屋に顔を出したのはチョロ松

様子を見に来た彼は室内を見てため息を吐いた

「遊んでんのかよ。」

「こんな面白い奴そうそういないからね。」

「お前、何人いるんだ。」

「秘密。」

声を揃える2人にクラクラしながら脳みそを動かす

「お前らのボス、アイツのこと全部分かってんのか。」

「は?」

表情を変えず聞き返す一松と黙ったままのチョロ松

男は真剣な顔を作り続ける

「アイツはなぁ自分の復讐の為だけに動いてんだよ!!両親の為!自分の為!お前らの事なんて微塵も考えてねぇんだよ!! お前らが傷つこうが死のうがなんとも思ってねぇんだよ!!」

言い切ると勝ち誇ったように笑う男

ポカンとする2人を見て勝利の二文字が浮かんだ

一瞬だけ

一松とチョロ松の目が合う

ガンッ

大きな音と衝撃がしたと思うと

目の前には拳銃を向けている一松

「それだけ?」

タバコに火をつけると1度煙を吸い込み笑う

「ボスが動いてる理由なんてとっくの昔に知ってるし、あんたはそれ以外なんにもわかってないのも知ってる。」

「ただ違うのはボスはもっと優しいことだね。僕らが傷つけば表情に見せなくても不安そうな雰囲気をだす。僕らを助けてくれる。一番に考えてくれる。」

「あ、聞こえてる?」

ニヤリと笑った一松は右耳に手を当てた

「…なにっ!!!」

急に左耳に激痛が走り声もなく唸る

「耳無いもんねぇ聞こえないよねぇ。」

「痛い…」

他人事の様に呟き顔を背けるチョロ松

また拳銃を構え直す一松

「次は?手?足?腹?それとも耳どっちも取っちゃう?俺らを怒らせたらこーなるって思わなかった?」

回らない頭を必死に動かし失言を撤回すべくとにかく口を動かす

「違う。」

チョロ松の言葉にまた激音

縛られた右腕に激痛が走り叫ぶ

「はいはい、もうアンタの事しか聞きたくないの。俺らの事はもういいの。」

「なんやかんやボスの事好きだよね。」

「やりたいことやらせてくれるし。」

少し赤くなって表情を顰める一松に思わず微笑む

「で、次言うことは?」

「お、れ…は…」

「俺は?」

「じょ、上司の言う事を、聞いて…あそこに来ただけで…」

チラっと見てくる一松に首を縦に振るチョロ松

「で、その上司って?」

「で、電話でしか話した事ないんだ…男なのは確かだ…」

「後は?」

「後は知らない!!ホントだ!!」

「嘘。」

「はいバーン。」

足の激痛にもう声もでない

全部見透かされている

口がへの字の青年に

「もうさぁ楽に死にたいとか思わないの。」

「今更過ぎない?」

もうダメだ

そう思った










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