孤児と大天使

□Episode1
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Episode 1














「神父様。」

とある教会

みすぼらしい格好をした幼女が聖書を読む神父に声をかけた

「ユエ、今日は早いな。」

「はい、運良く先に貰えました。」

力なくニッコリ笑う彼女に神父--カラ松は眉を下げる

「傷が出来ている。」

「あ。」

髪の毛であまり見えないが眉の上に血が滲み出ていた

「また、石を投げられたのか。」

「…」

下を向く ユエの頬を挟み上を向かせると

今にも泣き出しそうな顔と目が合う

カラ松は懸命に笑顔を見せ頭を撫でると席を立った

「手当をしないとな。」

処置道具を取りに奥へと消えるカラ松を見送ると

ユエは手を組み跪く

「神様、私は…幸せになりたいです。どんな形でもいいのです。」

「幸せ?それって君にとってどんなものなの?」

聞きなれた声にため息をつき後ろを振り返る

そこには今まで居なかった黒い羽の男が笑いながら立っていた

「あなたが、見えなくなることですかね。」

「そんな事言われてもさぁ俺だって何でかわかんないしぃ。」

神父と同じ顔をしたその悪魔はニヤニヤ笑いながら尻尾を揺らす

細長いそれは器用に ユエの頭を擦ると元の位置へ戻っていく

「他人が見えないものが見えるせいで、私は苛められます。」

「見えないフリすればいいじゃん。」

「あなたと違って普通の幽霊は見分けがつかないんです。」

「低レベルー。」

「悪魔と一緒にしないでください。」

そんな話をしていると靴音が近づいてくる

悪魔は

じゃあなー

と手を振り姿を消した

「ん?誰かと話をしていたのか?」

「いえ、お祈りを…」

「そうか、いい事だ。」

微笑み ユエの前に跪くと優しく額に消毒していく

「同じ顔でも笑顔が全然違う…」

「ん?」

「…いえ、なんでも。」

笑う幼女にカラ松は不思議そうに笑った
















山の中の小さな小屋の中

たまたま見つけたその場所が ユエの寝床だった

床につく前に日課をこなす

「神様、明日は平和でありますように。」

この願いが叶ったことは無いが

願わずにはいられなかった

目を閉じるとすぐに意識がなくなっていく

毎日毎日疲れはてているのだ

寝息が聞こえ始めてからしばらくすると

小屋全体が大きな光で包まれる

眩しさで目を覚ました ユエは驚きの余り声が出せないでいた

「え、え?」

「久しぶりね。」

ニッコリと微笑む女性

その姿は光り輝き背中には大きな白い翼が生えている

「かみ、さま?」

「あら違うわ、大天使よ。」

目立つかしら

そう呟いたかと思うと光が徐々に無くなっていききちんと姿が見えるようになった

「大きくなったわねぇおねーさん泣いちゃう。」

「え、あの…」

「大丈夫よ!!泣かないわ!立派な大人だもの!!」

胸を張って威張る女性に笑いがこみ上げる

ギャップが大きすぎないか

「あの、違うんです。きっとアナタは人違いをしている。」

「あら?」

「私、アナタに会ったことはありません。」

「え?」

少しポカンとしまじまじと顔を見つめられる

居心地が悪く少し下を向いた

「変ねぇ…あ!!」

「えぅ。」

「私の姿が違うのよ!」

驚きのあまり変な声が出たが気にしていないのか話を続ける

「私はあの時鳥の姿だった。悪戯好きの男の子達に捕まって苛められていた時にアナタに助けられたのよ。」

「え…」

「色は…確かピンクだったかしら。」

「あ…」

覚えがある

珍しい綺麗なピンク色の鳥

他と違うという理由で苛められていたのを可哀想に思い助けたんだ

その後いつもより怪我が多い姿をみて神父様が青い顔をしたのを覚えている

「興味本位で下界に降りてきたのは良いけど人間があんなに野蛮だったとは思わなかったわ。とっても遅れてしまったけれど、あなたに恩返しをさせて頂きたいの。」

「お、恩返しなんてそんな…」

「いいのよ、それにアナタいつも願ってる。」

「…幸せに、なりたい。」

不思議そうな顔をした大天使は首をかしげながら口を開く

「幸せ…?たとえばどんな?」

「…わからない。」

「それも一緒に探しましょう。」

安心する笑顔を向けられ眠気が襲う

「おやすみなさい私のユエ。」

「あ…名前…」

「ボスよ。」
















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