孤児と大天使

□Episode8
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「俺は、俺は寂しい。」

男泣きをする神父を慰めるユエもまた涙を目に浮かべていた

「今生の別れにしてやるよ。」

大鎌をカラ松の首に回しすぐ真後ろで囁いた一松は言葉の後目を丸くする

「一松ぅぅ別れというものは悲しいものだなぁ。」

泣きながら一松の頭を撫で回すカラ松は死よりも別れしか頭に無いようで

鎌の事は気にしていないようだ

「や、やめろし!」

「あらあらぁ?一松君照れてるの?」

「照れてねーし!」

真っ赤な顔でじたばた暴れるがカラ松の筋力に適わないらしく逃れられない

大鎌はボスがこっそり固定し首をはねないようにしていた

「愛されてるねぇ。」


おそ松は肘でユエを小突きニヤニヤと口角をあげる

照れながらはにかむ幼女を見ながらトド松は行くに行けない状況に少し焦れる

こんなに別れを惜しまれる事なんて無かったなぁ

そう思い目を伏せる

「トド松も。」

「え?」

「気が向いたら来てくれ。いつでも待っている。」

邪気のない笑顔はトド松を泣かせるのに一役買っていた

「これは、もらい泣き。」

そんな言い訳を小さく小さく漏らしながら








一通り涙が引っ込みトド松は思い出したようにカバンの中から古い神を取り出す

「これはこの世界の地図、どこに僕達がいるのかわかるようになってる。」

見ると

古紙には確かに地図が描かれており自分たちの住む街にはピンクのインクで丸が書かれている

「この丸が移動して、位置がわかるようになってるから。」

「すごいな。」

「魔法便利ー。」

トド松とユエは並びおそ松は幼女の後ろでいつものように浮かぶ

それを見たカラ松はキチリと立ちその隣でボスも微笑みながら並ぶ

一松は息を吐きながら鎌を肩に持ち直すとこれから旅立つであろう3人を見据えた

「じゃあ、行ってきます!」

「ああ、気をつけてな。」

手を振りながら遠ざかっていくユエを見届け手を組む

「あの者達に幸多からんことを。」

そのカラ松の手に両手を重ねられる

思わず顔を上げると微笑む大天使

「あの子達に大天使の加護を。」

手が白く光り輝きそれを見つめるカラ松の瞳も輝く

それを見ていた一松は本日何度目かわからないため息を吐きその光に手をかざす

「アナタにも情というものがあったのね。」

「...ただの気まぐれ。」

白色に足される紫色

「カラ松、もっと心で願って。」

「...。」

青が足された三色の光は先程旅だった3人の元へ飛んでいった











「わぁ!!」

空から降ってきた光に包まれたユエはキラキラした笑顔で仲間の2人を見る

「何とも異色な加護じゃん。」

「すっごぉい...」

自分の体の中に吸い込まれて行った光をただただ見つめ意気込むように顔を上げると待っている2人の元へ向かう

「あと2人、絶対に見つけ出す!!」

「おーおーいい気合い。」

いつもの笑顔のおそ松はいつもより若干荒く幼女の頭を撫でる

痛いと笑うユエはトド松に目を向けるとにっこりと笑った

「一緒にいる事を許してくれてありがとう。」

「っ...お安い御用だよ。」

赤くなる頬を隠すように手を持っていき菷にまたがる

「後ろ乗りなよ、人目が無いから次の街の近くまで行っちゃおう。」

「空を飛べる!!」

きらきらの笑顔で菷に乗るユエ

「落ちないようにしっかり捕まえててね。」

「はい。」

いい返事をしてトド松の服を掴む

すると意地悪そうな笑顔で近づいてきたおそ松はトド松にそっと耳打ち

「流石にロリコンだろー。」

「...そんなんじゃないよ、おそ松兄さん。」

「...。」

兄さん

その言葉に若干頬を赤らめるおそ松に腹黒い笑顔を返し地面を蹴る

同じ顔探しの旅はこうして始まったのだった











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