便利屋さんと一緒

□第1章
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1 長男






我らが次男が失踪した。

少し、いや、

結構弄り過ぎたかもしれない

ボロボロになった次男の背中が最後の姿になるなんて

誰も思わなかっただろう

「・・・」

一人欠けただけで静かになってしまったこの家で五人はそれぞれごろごろしていた

「・・・カラ松兄さん、どこに行ったんだろう。」

末っ子であるトド松が悲しそうに呟く

いつも笑顔の十四松も大きく開けていた口を閉じていた

「張り紙もしたし、町中探し回っても見つからないなんて。」

割としっかりしているチョロ松は外で色々と活動していた

恐らく俺しか気づいていないだろうが、あの一松も猫に聞きながらうろうろしていたみたいだった

いつも痛くて、鬱陶しくて、優しい

そんな次男・カラ松がいなくなった

「産まれた頃から一緒なのになあ。」

そう呟いた俺に、誰も反応しない

唐突に玄関の呼び鈴が鳴った

自然とチョロ松が立ち上がり玄関へ向かう

俺は何とはなしに部屋から玄関を覗いた

「あの・・・どちら様でしょうか。」

小さい声で対応するチョロ松の姿で見えないが声的に女性がきたようだ

「あら・・・彼に聞いていたより大人しいのね。」

「え?」

「あ、申し訳御座いません。私こういう者です。」

気になり玄関へ向かい差し出された名刺を覗き込む

「便利屋?」

名刺には

便利屋 利宝〜rihou〜
 名無

と書かれていた

「ええ、どうやらお困りのご様子でしたので。」

微笑む女に目をやり頭をかく

「お姉さん、胡散臭いねえ。」

「おそ松兄さん。」

皮肉を言う俺にチョロ松の制止が入る

「ふふ、よく言われます。」

気にしていないのか笑う女にチョロ松が申し訳なさそうに言った

「すいません、こんな兄で。傷ついてしまいましたよね。」

三男の言葉に俺と女の表情に驚愕が映る

「お前はほんとによく人をみてるよな。」

「そうかな。」

だからこそツッコミや六つ子をまとめる事ができるのだろう。

女は嬉しそうな顔をし「失礼。」と言って後ろを向き電話を耳に当てる

「ユエ、私の言った通り素質がありそうよ。

ええ、そのつもり。

そんなの関係ないわ、どうせ少し大きい兄弟喧嘩でしょ。

とにかくカラ松が逃げないように見張っておいて、すぐ帰るわ。」

その名前が出た瞬間、思考回路が止まり、

電話の終わった女がこちらを振り向いた瞬間、知らずのうちに手が出ていた

「だめだよーおそ松兄さん、女の人に手を出したら。」

拳を抑えた十四松が何時もの笑顔で俺に言う

「あの・・・名無さん、でいいんですよね。」

表情が変わらない女にチョロ松が聞く

いつもより真剣なその顔に俺の拳が下がる

「よろしければ、みなさんでお越しくださいな。」

五人で目配せし意見が統一した








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