song

□遥かなる時空の中で
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「透模様の素肌はラビリンス」


囁くように降り出した 
秋時雨から

ふたりそっと逃げ込んだ 
紅葉(こうよう)の隠れ家


天の涙に洗われた 
薄羽蜉蝣(うすはかげろう)

微笑んだあなたが 
まぶしくて目を逸らす


夢か現(うつつ)なのか

曇る眼鏡はずす

あなたの指へと 
口づける


ああ 
絹衣濡れて 
雨の筆が描く

美しき透かし模様

ああ 
迷い込みそうな

あなたの素肌はラビリンス


少し寒いとつぶやいた 
あなたの手を

もう二度と離しはしないと 
引き寄せよう


嘘か真実(まこと)なのか

迷い続けた時間

あの日の苦悩が 
なつかしい


ああ 
この胸の底で 
遠い過去が描く

淋しさの透かし模様

ああ 迷い込みはしない

記憶は刹那のラビリンスだから


…すれ違う…くちびる…切なさ…

…追いかける…微熱(ぬくも)り…愛しさ…


ああ 
まなざしが濡れて 
甘い吐息(こえ)が描く

美しき透かし模様

ああ 
迷い込みそうだ

あなたは儚いラビリンスだから







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