song

□遥かなる時空の中で
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「想春夢」


雪解けの庭をふと見れば

小さき蕾の白き薔薇

其(そ)はまるで読みし戯作(ほん)にある

恋を知らぬ心のよう


人は誰もが誰(た)がことを

恋うるものだのだろうか?

陽の光を求む花の如くに


春まだ遥かに見ゆるけれど

幽かに流がるる花信風(あまきかぜ)の薫りよ

虚し現世(うつしよ)にも春は来たり

すべてが玉響(たまゆら)だとしても

何処かで春告鳥(うぐいす)が啼いてる


此の世には特に愛でるべき

ものは無しと思うけれど

いつの日かこんな心持ち

変わる時がありやなしや


人はいつか誰(た)がことを

想うものなのだろうか?

此の醒めた心抱いて生きても


春まだかけそけき気配なれど

氷が溶けゆくあの川のせせらぎ

うつりにけりな 亦(また)春は来たり

すべてが泡沫だとしても

たゆとう蝶は空に踊る


人は誰もが誰(た)がことを

恋うるものなのだろうか?

分かりえぬ其れは夢のまた夢


春まだ遥かに見ゆるけれど

幽かに流がるる花信風(あまきかぜ)の薫りよ

虚し現世(うつしよ)にも春は来たり

すべてが玉響(たまゆら)だとしても

何処かで春告鳥(うぐいす)が啼いてる
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