song

□遥かなる時空の中で
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「夜籠りの夢」


明日から欠ける満月 
満ち足りても刹那よ

あなたを恋う苦しみは 
永遠の至福となる


衣擦れの音が 
透廊を渡る

瑠璃の毬香炉 
空薫物を


咲き乱れる花を敷いた

夢の褥 
あたなだけに


心は上弦の月 
募る想いおさえて

あなたを待つ切なさが 
真実の至福となる


ふるえる素顔に 
薫りだけまとい

涙の在り処を 
扇でかくす


虹の糸で織らせてみた

衣に袖を 
通しておくれ


紫檀(したん)の箱に閉じ込め 
誰にも見せたくない

小指を繋いだだけで 
身も魂(こころ)も満ち足りる


微笑むあなたを誰も 
傷つけたりできない

ただひとつ守りたいもの 
奪わせたりはしない


儚き移り香となり 
せめてそばで眠ろう

あなたを恋う苦しみは 
永遠の至福となる





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