うたたね
□おそろい後編
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放課後。
週の真ん中だからか、いつも以上にやる気の無いHRが終わりクラスのみんなも教室を出ておのおの部活や帰宅を始める。
私もいつもは割と早く帰っちゃう人だけど今日は特別。
トシに、昨日の 渡さなきゃ。
鞄の中を控え目に陣取る紙袋はまるで私の心を表しているのかのよう。
朝や昼休みに渡せばよかったものをまだ自分で手に汗握りながら持っているなんて。
なんだかちょっぴりこわくなったんだ。
トシは優しくてかっこいい自慢の彼氏だけど。
その、なんていうか、"恋人"らしい事をあんまりしたことないんじゃないかと思う。
一緒に帰ろうと思ったってトシは部活があるし、たまに一緒に帰る事があるけどその時だって手を繋ぐわけでも腕を組むでもなくお互いの掌は宙を漂う。
ほんとに恋人、なのかな。
決してよくない思いが頭をかすめる。
告白してきてくれたのはあっちだから何があっても大丈夫なんて考えてきたけど。人の気持ちなんてはかないものだ。 何かをきっかけに180度変わってしまう事だって少なくないはず。
(もし、もうあたしの事なんて好きじゃなかったら?)
こんな物渡したって迷惑の他ないだろう。
てゆうかほんとにそうだったらどうしよう。
トシは優しいから、テレビドラマで見るようなひどいふり方はしないだろうけど。
(優しくふられるっていうのもなかなか…)
すでにダッフルコートを着込み、マフラーを巻いた格好で教室のイスに座って眉をひそめている姿はさぞ滑稽だろう。
頭の中を取り巻く思い。
教室の扉が開くまであと数秒
(取り巻く思いをあなたが夢色に変えてくれるまで、あと数分)
END