リレー小説!
□お嬢さん、お手をどうぞ
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ばっ、と目を覚ました。見慣れた天井と目が合う。
あれ。
そういえば、昨日。
白いふよふよしたお化け、…じゃなかった。駅前でぶつかった銀髪のやたら格好いいお兄さん(スクアーロという22歳らしい)と仲良く(?)なって一緒に鉄火丼食ったんだっけ。
我ながらいい出来だったな。スクアーロだっておいしいって言ってたし。
「ふあ」
あくびをして、着替えに取り掛かる。パジャマを脱いで、そこら辺に投げ飛ばされたジーパンとシャツを引っつかんだ。
ピンポーン。
こんな朝早くから(9時だしそうでもないか)、誰だろう。
インターホンの気の抜けるような音がする。
ピーーンポーン。
「はぁーいぃ」
あわててズボンを履いて、ばたばたと玄関に出る。
シャツが捲れ上がっているのをぱんぱんと直して、玄関を開けると、
「あ」
「よぉ」
少しだけ、しゃんとした服を着ている銀髪のロン毛が立っていた。
ワイシャツにネクタイ、紋章のついたバックルのベルト。ばってんの模様をしてる。ちょっと高そうな黒いてかてかした短いブーツに、やっぱし外国人だーと思わせる何かがあった。
「どしたの、こんな早く」
「早くもねえと思うけどなぁ」
ぼさぼさの頭に整ってない服装を見て、寝起きですと言わんばかりの雰囲気をかもし出すわたしを見てスクアーロは苦笑いをしてみせた。おいこら、お前さりげなくばかにすんなよ。
「昨日の礼がしてえと思ってなぁ」
「は?」
「マグロのアレがそりゃあ美味くて、久しぶりに心から満足できたぜぇ」
マグロのアレとは、わたしの鉄火丼のことを言っているのだろうか。
「べつに、なんとなく作っただけなんだけど」
「なんとなくにしてはいい腕だぁ」
「…ほめられても何も出ないんだから」
ちょっと照れくさくて、いつものクセでありがとうが言えない。
わたしはそういう種族の人間なのだ。照れ屋で、ありがたいと思っていてもありがとうが言えない人間なのである。
そういうのだから誤解されまくる人生(まだ20年も生きてないが)を送ってきた。それでも分かってくれる人といい友達でいさせてもらってる。時間にルーズなのが玉に瑕だけど。
「で、だなぁ」
「で?」
にやにやとした、それでいてさわやかな笑みを見せてわたしを見下ろした。
う、わ、イケメンって、罪。
どんな顔してもカッコイイって最悪じゃんか。くやしいぞなんか。
「今日は奢らせろぉ。どこでも連れてってやる」
「え、えええええ!?」
「んーそうだなぁ。ブランドもんでも買ってやれるぞぉ」
「ええええええええええ」
「なんなら宝石類でもいい」
「あええええええ!?」
こ、この人の財布はどういうことになっているんだ。
外国人はみんなそういうもんなのかな…?そんなばかな…。
というかこれはナンパ?いや、義理堅いものなのか外国人って。助けてもらったら助け返すのが当たり前なのか?紳士なのか?
あ、も、もしかして、これは油断させておいてわたしをさらってにゃんにゃんするつもりとか…あばばば怖い怖い!どうしろっていうの!
「そんな難しそうな顔してなんだぁ?別に取って食うつもりはねーぞぉ」
「!!?」
「ほれ、分かったらとっととしゃれ込んで来い」
「ええええー!?展開速すぎでしょうこれ!」
「うるせえなぁ!俺は思ったことは直ぐ行動に移すタイプなんだよぉ!」
「あんたの性格は聞いてないから!」
バタバタと慌ててリビングに戻り、出来るだけ外行きの時に着るようなちょっとオシャレな服をクローゼットから引きずり出して、
「ふおぉおお…」
「ゔぉい、さっきより断然いいじゃねえかぁ」
ひらひらした(短くはないけど)スカートとか、ちょっと高かった有名なお店のパーカーとか、ブーツとか…
ってデート装備じゃんコレ!どうしよう!
「日本のモンは高ぇよなぁ」
「あえ、あ、ウン…って何そんな急に」
バイトを増やしたいわたしにそんなケロリといわれても。怒るぞ。
でも最近金に困っているのは事実で、そんなことないわとは言えない現状。
「いよぉし、じゃあ行くぞぉ!」
「なにそれ!」
「奢りだって言ってんだろぉ?」
「いやああ高収入こわい!」
「甘いもん好きかぁ?」
「だいすき!……ってそんな、別にそんな食べたいわけなんかじゃ、」
「よーし行くぞぉー」
「いやあああああ!」
お嬢さん、お手をどうぞ
やめ、ちょ、ま、いや、待ってェエエエ!