■変装資料室■
□体操着でGO!!
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チクタク
チクタク。
時を刻む時計の時刻は午後10時過ぎ。
タップリ晩御飯を堪能して風呂にも入った成人男性がここに二人。
片方は満面に卑猥な笑みをこれでもかと言う程に浮かべている褐色の色男。
もう片方は、そんな男の向かいに正座し、男の持つコスチュームに顔色を見事にビリジアンに変える色白のトンガリ男。
「ほ、本気ですか、ゴドーさん」
「あぁ。マジもマジで大マジだぜ、コネコちゃん」
間髪入れず隙の一切ない笑顔で答える変態オヤジに───成歩堂は引っくり返りたい心境に陥った。
ことの始まりは、他愛のないゲーム。
その日一日お互いの好きなものを我慢できた方の勝ちと言う、何ともシンプルなもので。
ゴドーは言わずもがな、コーヒーを。
成歩堂はグレープジュースを。それぞれ口にした方の負け、と言うもので。
負けた方が勝った者の言いなりになると言う王道の、アレである。
そうして見事、と言うかやはりと言うか、惨敗を期した成歩堂は、敢えなくゴドーの言いなりとなったわけである、のだが…。
目の前には、喜色満面とばかりに胡座をかいた男。
シーツの上には───男であれば誰しもが一度はムラムラと来たことがあるであろう………エンジ色のブルマと、白地にエンジの縁取りの、半袖体操着。
ご丁寧にも胸元には『3年2組、成歩堂』としっかり明記されているネームシート。
白いシンプルなハイソックスと、紅白のハチマキ。
「罰ゲーム、受けて貰おうか、3年2組のなるほどうりゅういちくん」
語尾にハートマークの幻影を見ながらクラクラ眩暈を起こす成歩堂をシーツに引き倒し、ゴドーは目にも止まらぬ早業で成歩堂の部屋着を剥ぎ取ると、あっと言う間に真っ白のハイソックスにピッチピチのブルマ、目にも鮮やかな程に真っ白の体操着を身に纏い、敢えてハチマキも男巻きではなく、よく色気づいた女子どもがするような、若干の前髪の後ろから巻くと言うスタイルで細いハチマキを巻いた───だけれどやっぱり後頭部の頭髪はとんがっている───成歩堂が完成したのである。
不本意過ぎる───と言うよりも寧ろ此処まで来たら屈辱でしかない───格好ゆえに涙をその大きな瞳にしこたま溜め込んで、上目に睨む成歩堂を満足げに眺めたゴドーは、これを残さず何とすると言う具合に携帯の写メで連写撮影会が開かれてしまった。
ああもうこうなりゃ好きにするがいいさとばかりに自棄を起こした成歩堂は、最初こそ屈辱に歪んだ表情を見せてプィと外方を向いていたのだが、そのうち何だか気分がノッてきたらしい。
ゴドーカメラマン───!!───の言うがままのポージングを決めるようになり、挙げ句の果てには自ら進んで四つん這いになってピッチピチブルマに包まれてその形が具に分かる尻をゴドーに向け、恥じらいを滲ませて後ろを振り返ると言うグラドルも真っ青のポージングをやってのけたのだ。
それには流石のゴドーも箍が外れたらしく。
用意周到にも体育教師仕様のジャージの上下を身に付けていたゴドーの役処は勿論───体育教師。
素肌に直接着た深緑色のジャージのジッパーをジジジ…と摘まんで下げ、胸元を肌蹴させると、携帯を枕元に放り投げ、クィと口角を持ち上げた。
「今日はマット運動がちゃんとクリア出来るまで、寝かせないぜ、まるほどう」
「ま、マット運動ってゴドーさ…」
ペチン、と。
桃尻を打たれて思わず息を詰めた成歩堂に、今度はその大きな手のひらが叩いた部分を癒撫するように、やけにゆったりと卑猥に撫で回す。
「ゴドーさんじゃ、ねぇだろ、まるほどう?『ゴドー先生』だろ」
───っぎゃああ!!変なスイッチ入っちゃったよこの人ォォォォ!!
後悔したとて今更遅い。
ガッツリおかしなスイッチが入ってしまったゴドーは、俄然ヤル気でクィと未だに四つん這いの状態をキープしていた成歩堂の頤を捕らえて上向かせ、嗜虐に満ちた視線を落とし、華奢な銀フレームの眼鏡を装着した。