■変装資料室■

□応援団でGO!!
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酔った勢いとは怖いものである。

後に成歩堂、ゴドーの両名は痛感する羽目になるのだが───







「はぁ?コスプレパーティー?ハロウィンでもないのに!?」

思わず素っ頓狂な声をあげたのはこの法律事務所の所長、成歩堂龍一。
彼の目の前には、満面の笑みの真宵と春美。
この笑みを浮かべている時の二人は、ろくでもない事を企んでいるのだ、大概は。

「だぁって楽しそうなんだもん!!コスプレパーティー!!ねっはみちゃん!!」
「はいっ!!こすぷれぱーちーなるもの、私もしてみたいですっ!!」

そんな風に無邪気におねだりされてしまえば、成歩堂はひと溜まりもない。

斯くして『衣装は私とはみちゃんが用意するからメンバー集めヨロシクねっ!!』と言う真宵の指示通り、成歩堂は片っ端からメールを送る羽目になった。

そうして集まった面々は───

ゴドー、ただ一人。

矢張は案の定行方不明であり、御剣はアメリカにいるため成歩堂の携帯からではメールすら届かぬ始末だ。
糸鋸はマコくんとデートだから誘っちゃダメだよと真宵に釘を刺されていたのでメールすら送れておらず。



結局成歩堂と同じく真宵たちに甘く弱くノリも良いゴドーだけがこのオフザケ企画に付き合ってくれることになったのだ。


そうして場所は、ゴドー宅に真宵の独断で決まり、悪い顔ひとつ見せぬゴドーに連れられてお洒落なマンションのゴドーの部屋へ。

お菓子やら飲み物やら衣裳やらをしこたま持たされた成歩堂はもう既に疲労困憊と、つい先日恋人になったばかりのゴドーの部屋に初めて来たと言う感動よりも、一刻も早くこの荷物を投げ出したい欲求の方が遥かに勝っていた。

連れてこられたリビングの床に取り敢えず大荷物を置くと、ああ腰が痛いとばかりにソファに座ったら、タイミングよくゴドーが香ばしい芳香を漂わせたコーヒーが並々と注がれたマグを二つと、空のグラス二つを持って戻ってきた。

きゃっきゃとはしゃぎながら少女たちは先程まで成歩堂に運ばせていた荷物から思い思いのジュースを取り出すと各々で渡されたコップにジュースを注いでいる。実に楽しそうだ。

レディファーストだとばかりに先に少女二人にグラスを渡したゴドーは、然り気無く成歩堂の隣をキープし、ソファに座るよう促すとちゃっかりその隣に座り、マグを手渡した。






ゴドーが淹れたコーヒーが何よりも好きな成歩堂は嬉しそうにそのマグを受けとると、立ち上ってくる香りを楽しみ、『いただきます』と小さく言ってコクリとコーヒーを一口飲んだ。

「……はぁ。うまいです、相変わらず」
「……クッ。そうかィ。そいつぁ良かった。小さなレディ達の荷物持ちを買って出てくれた所長サンには目一杯労っちゃうぜ」

ふざけた調子でそう笑うゴドーにつられてニヘラと笑いながら、成歩堂はつかの間の珈琲たいむを満喫した。

さてさてそれから。
いそいそと荷物の中身を出して見せた真宵は、満面の笑みでゴドーと成歩堂にそれぞれのコスチュームセットを手渡した。

「神乃木さんは背高いから長ランの応援団長でねェ、なるほどくんは短ランの応援団員!!二人とも似合いそう〜ってはみちゃんと話してたんだよねェはみちゃん!!」
「えぇそうですともッ!!お二人ともスタイルもよろしいのできっとお似合いになると思います!!
そうして真宵様は可憐なセーラー服の少女で学園のアイドルなのです!!
そうして私はそんな真宵様の執事です!!」

いったい何なのだその設定は…と思ったが、敢えて大人二人は黙っておいた。


それは偏に少女たちの楽しみを半減させて仕舞わぬようにとの配慮───よりも、ただ単にお互いの学ラン姿───喩え応援団コスプレだとしても!!───が見てみたかっただけだったりする。

まぁ、お付き合いしたてのバカップルなのだから致し方なかろう。

今からここで私ら着替えるからあっち行って頂戴とテンション最高潮の真宵と春美に寝室に追いやられた二人は、それぞれのコスチュームをベッドに拡げ、ちらりとお互いの顔を見合わせて苦笑した。

「───ここんとこ真宵ちゃんたち多忙を極めていたようですし、ストレスも溜まってるんでしょうね」
「あぁ。可愛いおじょうちゃんに頼まれちゃ、断れねェよなァ」

苦笑を浮かべながらシュルリとネクタイを抜き去るゴドーに釣られるようにして成歩堂もまたネクタイに指をかけた。







はてさて。
それぞれに準備が整った4人は再びリビングにいた。



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