■調査資料T■

□後攻-side神乃木-
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宣戦布告だと?

上等だ

受けてたって、やろうじゃねぇの


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後攻-side神乃木-
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それは予感ではない。
紛れもない確信だ。

最近、彼の弁護士は妙な色気がある。

元来備わっている物ではない。
それは───他者との肉悦を知らねば滲み出さぬ、色香である。


───ヤりやがったな、あのヒラヒラ野郎


直感だった。




神乃木は何も、初めから成歩堂をそのような対象として狙っていた訳ではなかった。


ただ、何と言っても彼は命の恩人であるし、己に光を授けてくれたただ一人の人間であることは間違いないのだが。

ただ、それだけだった筈なのだ、初めは。




その感情に変容が見られたのは───あの事件が解決し、成歩堂の働きで執行猶予付きの情け深い判決を頂戴した後。兼ねてからの懇願により、神乃木はパラリーガルとして星影法律事務所に籍を置くこととなった。

まぁ尤も、星影が彼の身元引き受け人である事が、彼の事務所に再び籍を置く最大の要因であることは言うまでもないのだが。

それとは別に、成歩堂からも土下座が床にめり込む程の勢いでもって未熟な自分の指導をして欲しいと懇願に懇願を上塗りされ、元来人の好い質の神乃木は了承したのだ、が。

思えばそれが、不用意に二人の距離と関係性を縮め、密接に繋げる起因となったのだと。今なら分かる。



基本素直で飲み込みが早く、此方の指示したものや教えた事は抜かりなく記憶し、時折まごつきながらも出された課題をきちんとこなす、超優等生である。

それもその筈だ、と納得するより無いのは、法学部でもないのに、在学中にストレートで司法試験に合格できるだけの男なのだ。

本来、外見からは想像できぬくらい、優秀なのだろう。

ただ、少し脆いところと。
少し人を信じすぎるところと。


少し頑固で無鉄砲な所が───此方をハラハラさせる。

曾て愛した女にもしたように、コイツも立派な弁護士としてきちんと本当の意味で独り立ちさせてやりたい───と。
彼の事務所を手伝うようになった当初は、それだけの思いしか神乃木には無かった。


少し成歩堂が気にかかり出したのは──────彼の親友だと言うあのヒラヒラクラバットが帰国する日に限って、成歩堂がやけにソワソワと落ち着きを無くすようになってから。




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