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□わずらい(兄忍)
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「それは有難いでござる…だがよくブロッケンと話が着いたな」

「ん…あぁ、実は最近よく連絡を取っていてな。向こうはバッファも一緒だというからお互い時間を見つけて会おうと前々から話してたんだよ」

初耳だ。そんなに頻繁にブロッケンと連絡を取り合っていたなどと知らなかった。
ということは、見立てはほぼ間違いないだろう。
先のあれはブロッケンに違いない。
ニンジャは意外な返答の連続にただ小さく相槌を打つだけして、それ以上は問わなかった。




アタルは伝えるべきことだけ伝えてしまうと本当にあっさりと部屋を去っていった。

もう先程から、気にしすぎだと幾度思ったことか知れないが、それがやけに事務的のような気がしてならず深い闇の色の眸はより暗く沈む。

ブロッケンとはあんなに楽しそうに話していたというのに。

アタルという男に限ってあからさまな贔屓を見せることはないのかもしれないが、だが彼も人である以上、好みの優劣はあるだろう。

本当は、己よりもブロッケンの方が大切なのではないか――

「っ……、」

考えるつもりなどなかったというのに、つい身勝手な被害妄想が脳裏を過り、ニンジャは出立の身仕度のため手にした着替えを固く握り締める。

血盟軍が解散したのち、彼が自身のパートナーにと己を選んでくれたことが嬉しくてすっかり失念していたが、アタルは以前から相当ブロッケンのことを買っていた。
当時はアタルが何故自分を血盟軍に勧誘したのか解らず、名実ある他の面子に引け目を感じていたと共に、彼に惹かれていくうち殊更気に入られていたブロッケンに嫉妬を覚えるようになっていたのも正直なところ。

忘れかけていた鬱屈した思いに苛まされ、ニンジャは深い溜め息を吐きながらどうしようもなく項垂れた。

こんな感情、馬鹿げている。
そうと分かってはいても、ただひとえにアタルを想いを寄せるあまり、もやもやとした心の蟠りは失せることはないのだった。
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