*novel

□きみ色クレヨン
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「どうしたの?トシ君」




一人、イスに座っている男の子


この綺麗なストレートの黒髪の持ち主の名前はとうしろう君


笑う時には瞳をキラキラ輝かせ太陽のように明るく笑い、泣くときはうるうると目に涙を溜める姿がなんともかわいらしくてたまらない


銀時先生は平等に園児達と接しているつもりだが、この子のかわいさには勝てずに少々贔屓してしまうことがある


「さっきから全然手が動いてないみたいだけど?」


そう言って銀時先生はとうしろう君と視線を合わせるためにしゃがんだ
 





「………だ…って…」


トシ君どうしたの?と銀時先生が首を傾げると、とうしろう君は小さな声で話し始める


「……だって、銀色がないんだもん」


色塗り途中の絵に指をさしながらとうしろう君は言った


指さす場所はどうやら人間の頭の部分である


とうしろう君はクラスの中でも上手な絵を描くので何を描いているのだかわかったが、一応銀時先生は


「……トシ君?
これは何の絵なのかな?」


と尋ねた


そんな問いに


「え?ぎんときだよ?」


きょとんとして先ほどの銀時先生と同じように首を傾げた




この子は銀時先生を唯一呼び捨てにする園児


普通なら注意するが、とうしろう君のかわいさに免じてそのまま“ぎんとき”と呼ばせているのは、銀時先生がこの子にはそう呼んで欲しかったためである



 
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