slapstick paradise

□slapstick
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部屋に入ると明らかにイライラして不機嫌な表情の女性が机に座り、それと向かい合うようにして椅子がもう一つ置かれていた。
「入社希望のくせに社長待たすなんていい度胸してんじゃねぇか。あ?」
「あ、す、すいません。」
「もっとはっきり喋る!!」
「は、はい!」
怖い。取りあえずそれが第一印象だった。
「名前は?それと歳」
「か、海堂蘭丸です。歳は16です。」
「ふぅん。じゃあ次、前科は無いよな?」「あるわけないじゃないですか。」
「よし。んじゃあ採用。明日から早速きてもらう。遅刻すんなよ?」
「え、ちょっ、ちょっと待ってください。あれだけで終わりなんですか!?」
「書類にかいてあったろ?入社条件は無しって。」
「あ、」
初めのインパクトが強すぎて、すっかり忘れていたが自分はそれが目当てでここにきたのだ。
「入社条件無し」の言葉を信じて。
「社長ー。お客様ですよー。」
部屋のドアが開き、さっきの青年が現れた。
「何ぃ客ぅ!?よし!鬼山。コイツ採用!相手してやれ!!」

そう言い残すと、女性はさっさと行ってしまった。


「とりあえず自己紹介から、俺は鬼山。鬼山巌介(おにやまがんすけ)だ。よろしく。さっきの人は煌金糸雀(きらめきかなりや)性格と違って綺麗な名前してるよな。それから、デスクに突っ伏してんのが獄殿寺皐(ごくでんじさつき)意識が戻り次第改めて紹介するよ。」
「あ、あのなんでいきなり落ちてきたんですか?」
「ん?ああ。何か昨日皐ちゃん寝れなかったみたいでさ、仕事中に寝ちゃってね。それにキレた社長が机ごと吹っ飛ばそうとしたのを止めたら俺が吹っ飛んじゃったってだけだから。」
「あの、それが普通なんですか?」
「うん。とにかくほら社長がキレやすいから。」
入社して数分で後悔を始めている自分がいる。だが自分のような孤児が生きていく為にはこうでもするしかないのだ。蘭丸の両親は突然地上へ上がると言い、まだ幼かった蘭丸を孤児院に預けそれっきり帰ってこなかった。
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