slapstick paradise

□約束
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「たかが全身打撲と裂傷が35ヶ所と骨折が14ヶ所と切創が12ヶ所と16ヶ所ぐらい縫っただけだ。」
「あ、社長。目が覚められましたか。」
「社長、多分それ普通の人なら絶対死んでますよ?」
「バカいうな。私が死ぬときは世界が破滅するときだけだ。」
「そうですか。」
その場にいた煌以外の全員が呆れたようにため息をついた。
「それにしても、何でそんなにぼろ負けしたんですか?」
リンゴの皮を器用にむきながら、皐が問いかける。
「言いたくない。」
それは、まるで拗ねた子供の意地のような言葉だった。






午前8時02分
総合病院・待合室
煌がまた少し寝たいと言ったので、鬼山以下slapstickの社員は全員病室から出ていた。
「鬼山さんは社長と一緒にいたんですよね?なんで負けたか、知らないんですか?」
三人分の缶ジュースを持った蘭丸が皐の隣に座っている鬼山に尋ねた。
「確かに見てたよ一部始終を。簡単に言えば、本気じゃなかったから。」
「本気じゃなかった?」
「社長は相手がどんなに能力を使えって言っても絶対に使おうとしなかった。」
「社長って、能力持ってたんですか!?」
入社したてで何も知らない蘭丸は目を見張った。
「当たり前だよ。こんな危ない仕事、能力無しじゃ生きていけない。まぁあの人面倒くさがりだから、滅多に戦闘なんてしないんだけどね。」
「相手はどんな奴なんですか?」
「少なくとも、お前等じゃ絶対に勝てないぐらいかな。だから、私じゃないと倒せない。」
「しゃ、社長!」
なんと煌がジャケットを羽織り、ギブスや包帯もそのままで病室から出ていた。
「じっとしててください!いくら貴女でもそんな状態で戦えるわけありません!」
鬼山が煌の前に立ちはだかる。
鬼山の言葉は語調こそ荒いものの、明らかな心配の色がにじみ出ていた。
「どけ。鬼山。」
煌が鬼山を睨みつける。その眼には微かな殺気すら含まれていた。
「どきません。あなたをこのまま行かせるぐらいなら、死んだ方がマシです。」
煌の殺気にも怯むことなく、ハッキリと言い返す鬼山。
そんな2人のやりとりを蘭丸と皐は、ただただ見ていることしか出来なかった。
「どうしても、どいてくれないか。」
「何が何でもどきません。」
すると、鬼山の腹部に強烈な一撃が与えられた。
「ガハッ!!」
そのまま、崩れ落ちる鬼山。
「悪い。これだけは、譲れないんだ。」
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