AMEN

□幼なじみとちょっとの嫉妬
1ページ/12ページ

「おい、シスターさん。教会前だ、着いたよ」
少しばかり肥満体のタクシー運転手が目的地に着いたことを乗客であるシスターに伝えた。
乗客、眼鏡をかけた鋭い瞳のシスターは無言のまま料金を払い無言のままタクシーを降りた。
「まいどありぃ」
運転手が車を発進させるのを見送ってからシスターは上を見上げた。
そこには
「ようこそ第2支部へ」
と書かれた横断幕がかかっていた。
軽く舌打ちをしながら、シスターが横断幕の下を通り過ぎる。風も無いのに横断幕が揺れたかと思うと、ハートの部分に穴が空いていた。




「でさぁ、俺はそこでそいつに言ってやったわけよ!『そいつぁ蜂蜜じゃない!通りすがりの篠山官房長官だ!!』ってな!」
「…………」
教会第2支部へと続く道を対照的な2人の神父が歩いていた。
1人は愉快そうにペチャクチャ喋っている青年だった。垂れた目や仕草は気だるそうなのだが、口だけは活発に動いている。もう一方の神父はなかなか個性的だった。オカメの仮面をつけ、大きな棺を担いだ男で先ほどから喋りかけられているにもかかわらず、何の反応も示すことなく黙って歩を進めていた。
「あん?なんだこりゃ」
垂れ目の神父が見上げた先には例の横断幕があった。
「『ようこそ第2支部へ』…ここの連中はふざけてんのか?」
「………」
「まあいいや。行こうぜ」
横断幕の下をくぐると仮面の神父が1枚の札を懐から取り出し、横断幕に向かって投げつけた。札が横断幕に当たった瞬間、横断幕を青色の炎が包みただの灰に変えた。
こうしてカーティスが3日かけて1人で製作した横断幕はただの灰と化したのだった。


「これは、一体何でしょう……?」
1人のシスターが木の陰に隠れ、やたらとビクビクしながら道の真ん中に落ちている灰を見ていた。
(わ、罠?私がここに来るの知ってどこかの誰かが罠を仕掛けたの!?この灰は、まさか私の代わりに誰かが犠牲になって…ああああああ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。な、何でもします。何でもしますから許してくださぃぃぃぃぃ)
シスターは胸元の十字架を握りしめて何かブツブツ呟き始めた。彼女が第2支部に着くのはもう少し先の話になりそうだった。



「あぁ〜、増援の皆さんはまだ来ないんですかねぇ〜。早く特製横断幕の感想を聞きたいのに〜」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ