AMEN
□殺戮の聖職者
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夜という時間は、不思議なものだ。人によって、様々な反応がある。夜を嫌悪するもの、夜を好むもの、全く関心のないもの。彼らの場合は…
午前2時
既に時間は深夜と呼ばれる時間帯となり、大方の物は眠りについていた。
しかし、彼は焦っていた。いつものように非力な人間を殺し、捕食していた時だった。突然現れた“それ”によって彼の右腕は吹き飛ばされてしまった。
彼は動きを止める。
右腕が無くなった部分からの出血がなかなか止まらず、スタミナの浪費が思っていた以上に激しかった。しかし、“それ”の気配はもう無い。
だが、またいつどこから“それ”が姿を現すかわからない。少し休んだら、楽になった。
だから、また進む事にした。
天高く跳躍する。そのまま、前に進もうとした。なのに、
「みぃつけた」
すぐ後ろで、声が聞こえた。“それ”の声だった。その次に爆発音、そしてすぐ後に左肩に鋭い痛みが走る。見ると、今度は左腕がなくなっていた。あまりの痛みに思わず、叫び声をあげた。
「うるさいですよ」
不機嫌そうな“それ”の声と共に、地面に叩きつけられた。頭ががんがんする。もう、まともに思考することすらできない。
「さぁて、神様は気が短いので、さっさと済ませましょうか」
“それ”が自分に何かを向けている。
「それでは。良い夢を。AMEN」
そして爆発音の後、彼の意識は無くなった。
「あーあ。思ったより時間くっちゃいましたね。ま、ぼちぼち帰りますか」
眼鏡を掛け、漆黒の聖衣に身を包み、首から十字架を下げている銀髪の男。右手に持った凶悪な武器、純銀の弾丸を吐き出す漆黒の拳銃。それを懐にしまいながら、男が辺りを見回す。
「どこかに開いてる酒場は無いものですかねぇ」
今日はいつものように、堅苦しい相方は来ていない。
「いくら聖職者だからって、無理はいけませんよねぇ。無理は」
独りごちて、ポケットからタバコの箱を取り出す。そして1本口にくわえ、火を着けた。
(あー、生き返るー)
ひと仕事こなしてからの一服はやはり最高だ。そんなことをぼんやり考えながら、ゆっくり歩きだそうとしたその時
「まったく。私がいなければこの始末ですか。いろいろ言いたいことはありますが、とりあえずその煙たい棒をお捨てください」
目の前に現れた1人の少女。
「これはこれは、シスターサーシャ、えーと、今日は君、非番なんじゃ無かったですか?」