AMEN

□信仰の代償
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「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
入り組んだ廃墟の通路を黒い髪をオールバックにしている若い男が走っている。
彼、マーロン神父は焦っていた。
彼はカーティスと同じ、魔の駆除を担当している神父のひとりだった。
「はぁはぁはぁはぁ。まいったなぁ。まさか、こんなタイミングで彼らと接触してしまうとは」
切り裂かれた自らの右腕の傷を左手でふさぎながら、廃墟の出口を目指す。
彼は若いながらも強力な力を持ち、それなりに名も知れていた。
(やっぱり、1人で来たのはミスでしたね)
今日彼はこの廃墟に夜獣の駆除に来ていた。
夜獣の駆除は難なくこなしたのだが、その後に出てきたヤツらがマズかった。
(とりあえず、大司教様に報告しなければ)
気がつくと、すでにロビーへとたどり着いていた。
(もう少し…!)
一気に駆け抜けようと、足に力をこめた。

しかし突然背中から空気を切り裂く音を聴き、マーロンはとっさにその場に倒れこむ。
その頭上を巨大な鎌が通過する。

「あちゃー、おっしい!!もう少しだったのに」

その鎌が飛んできた方向から少年の声がした。
廃墟の闇の中から、長い金髪を後ろで束ねた黒装束の少年が姿を現す。
「さっすが神父さま。あの一撃をよくかわしたね」
少年が手をかざすと、壁に突き刺さった鎌がすっと少年の手の中に戻る。
「ええ。私も命が惜しいですから」
マーロンが立ち上がりつつ、少年を睨みつける。
「そう怖い顔しないでよ。ビビっちゃうじゃない」
無邪気な笑みを浮かべながら、馴れ馴れしくマーロンに話しかける少年。
「残念ですが私は急いでいますので」
そう言うやいなや、後方へと跳びながら、手首に仕込んだ数本のナイフを投擲するマーロン。
ナイフは一直線に少年へと向かうが、少年の持っている鎌が全て弾いてしまった。
(さすがにあれで仕留められるほど甘くはありませんか。まぁ、時間稼ぎにはなりましたけど)
確かにナイフは弾かれたが、少年は鎌を動かす動作によってマーロンの動きに対する反応が少しばかり遅れた。

「ダメよ。逃げるなんて。面白くないじゃない」
突然マーロンの背後に、別の気配が現れる。
「なっ!」
とっさにそちらを向こうとするが、背後の気配が動くほうがはるかに速かった。
肉が引き裂かれる音と共に、左肩に激痛がはしる。
そのまま倒れてしまったマーロンの視界に、吹き飛ばされた左腕が写った。
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