slapstick paradise

□危険な危険なお役所仕事
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「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
朝の爽やかな日差し(もっとも人工的に造られたものだが)の中を必死の形相で全力疾走している一人の少年。
「やばいやばいやばいやばいぃぃぃぃ。あと5分しかない。遅れたら殺される〜。」
それはまさしくslapstick正社員。海堂蘭丸であった。
彼が何故急いでいるかというと、
「明日は朝5時までに来いよ。遅れたらわかってんな?」と社長煌に言われていたからだ。
「あの人じゃ何されるかわかんないよ〜。せっかく生活の目処がたったっていうのに、まだ死ぬわけにはいかないんだぁ!」
転びそうになりつつも、どうにか狭い路地の曲がり角をまがる。すると蘭丸の視界にあの廃墟と看板が見えてきた。
「あと3分!」さらにスピードをあげる蘭丸。
「間に合えーー!!!」


バタン!
「おー蘭丸くん。おはよー。」
コーヒーカップを片手に出迎えてくれたのは、先輩の鬼山だった。
「あ、おはようございます。て、そんなことより、時間は?」
「ああ、今4時59分42秒。」
「ま、間に合った〜。」
心からの安堵を覚え、その場にへたり込む蘭丸。
「あははは。どう?君もコーヒー飲む?」
そんな蘭丸を見て、楽しそうな表情をする鬼山。
「ちっ!」
すると、その奥からやたらとデカい舌打ちの音が聞こえてきた。
「残念でしたね。社長。彼は俺らとは違って優秀ですよ。」
からかうようにしてそちらを見やる鬼山。その方向には不満を顔中にたたえた我らが社長、煌が立っていた。
「何だよ。せっかく私が洗礼を与えてやろうと思ったのに。あーあつまんね。」
遅れたらなにをされていたのだろう。煌の手には釘バットと塩とレモン、スカートのポケットにはカッターナイフが入っていた。
「俺なんか一回熱湯を顔面にかけられた事あるよ。」
とけっこう大変なことをサラリと言う鬼山。
「そういえば、獄殿寺さんは?」
先程から見かけない先輩社員の名を蘭丸は挙げた。
「蘭丸くん。ウチは社員同士は下の名前で呼ぶようにしてんの。だから彼女のことは皐さん。俺のことは巌介さんね。あ、社長は例外だよ。あの人、下の名前で呼ぶと本気でキレるから。」
「はい。わかりました。」
バタン
すると部屋のドアが開き、皐が入ってきた。
「ただいま戻りました〜。」
「おう、おかえり。どうだった?」
「ちゃんと飼い主に返してきました。」
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