slapstick paradise

□約束
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カーテンが閉め切られ、照明も最低限に抑えられた薄暗い一室。
そこに二人の男がいた。
「君に依頼したいのはある人物の殺害だ。君には造作も無いことだろう?」
デスクに座った男が向かいに立っている男に問う。
「別にいいっすけど、いくら貰えるんすか?」
向かいの男は一応スーツを着ているが、ボタンを開け、シャツも気だるげに着崩されていた。
「成功すれば500万。前金で300万。いかがかね?」
「合計額が800万!!そいつはいいや。受けましょう。この依頼。」
これまた気だるげだった顔に少しだけ活気が戻る。しかしそれでも周りから見るとやはり気だるげに見える。
「では、良い報告を待っているよ。」
座っていた男が立ち上がり、気だるげな男に握手を求める。
だが気だるげな男は完全に無視して立ち去っていった。







午前4時55分
slapstick事務所
海堂蘭丸はいつもどうりタイムリミット5分前に事務所へとたどり着いていた。
「おはようございまーす?」
蘭丸の挨拶が疑問系になったのは普段とは明らかに違う点を見つけてしまったからだ。
「あの〜。社長と巌介さんは?」
そう。本来中央のデスクに座っているはずの煌とそのすぐ近くのデスクにいるはずの鬼山の姿が無かった。
「ん?ああ社長なら鬼山さんとお出かけですよ。」
部屋の中には酢昆布をくわえながら観葉植物に水をやっている皐のみだった。
「そうですか。皐さん。」
「なんですか?」
「酢昆布貰えますか?」
「…ダメです。」
「そうですか…。」







午前4時56分
THE WORLD内共同墓地
墓地の中の一番隅の一角に2人の男女が立っていた。
男はサングラスをかけた長身の青年。
女は眉間にしわを寄せ、煙草をくゆらしていた。
男の名は鬼山巌介。
女の名は煌金糸雀。
共にslapstickの社員と社長である。
「また、この日が来ましたね。」
「ああ。」
普段のような軽口を言い合うこともしないでただただ2人は佇んでいた。
「今年も来るのかアイツが。」
「来るんでしょうね。彼。」
ポツリ
「ん。」
煌がくわえている煙草の火が突然消えた。
「雨ですか。」
政府の人間たちによる地上進出を防ぐための対策の一つに地下の環境をより地上にいた頃と同じにしようというものがあった。
その対策により、地下でありながら、曇り、雨、晴れといった「天気」がうまれ、「四季」までもが生み出された。
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